株式の信用取引において顧客が証券会社に対して特定の株式の売付委託をしたことがないと主張していたなど原判示のような事情がある場合に、右顧客が更に書面で同旨の告知をしたときは、右告知によつて清算の意思が表示されたものとして、証券会社は、右株式について手仕舞をすべき義務がある。
株式の信用取引において顧客が清算の意思を表示したものとして証券会社に手仕舞の義務があるとされた事例
証券取引法130条
判旨
証券取引において、受託者は信義則上の義務として、特定の時点において買付契約を締結して手仕舞うべき義務を負う場合がある。
問題の所在(論点)
証券取引の受託義務において、特定の時点における買付契約締結(手仕舞い)義務の存否、およびその不履行による責任の有無。
規範
受託者が委託者に対して負う義務の内容は、契約の性質や取引の経緯に照らして判断される。具体的には、市場の状況や当事者間の合意、信義則上の合理的な期待に基づき、特定の時期までに決済(手仕舞い)を行うべき義務が肯定される。
重要事実
上告人と附帯上告人との間で係争株式の取引が行われていたところ、昭和53年9月19日の時点において、上告人が当該株式について買付契約を締結し、手仕舞いを行うべきかどうかが争点となった。原審は諸証拠に基づき、当該時点での手仕舞い義務を認める事実認定を行っていた。
あてはめ
最高裁は、原審が認定した事実関係(詳細は判決文からは不明だが、挙示証拠に基づくもの)を前提とすれば、昭和53年9月19日の時点で買付契約を締結して手仕舞うべき義務があるとした判断は正当であるとした。上告人の主張は事実認定を非難するものにすぎず、原審の判断に違法はないと解される。
結論
上告人には昭和53年9月19日時点で手仕舞うべき義務があり、これに反した場合は義務不履行となる。本件上告および附帯上告は棄却された。
実務上の射程
具体的な義務の発生時期は事実認定に大きく依存するが、証券会社等の受託者が漫然と取引を継続せず、適切な時期に決済すべき信義則上の義務を負うことを示す。答案上は、善管注意義務や信義則に基づく具体的な行動義務を基礎付ける際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)562 / 裁判年月日: 昭和38年12月3日 / 結論: 棄却
一 証券業者の外務員は、特別の事情の存しないかぎり、顧客から株式の売買取引の委託を受け、顧客との間で受渡のため株券又は金銭を授受し、いわゆる保護預り、名義貸契約に伴い株券の授受をなし、新株払込金を受領するにとき、証券業者を代理する権限がある。 二 外務員と顧客との間に一般取引関係からする信用をこえる特別の個人的信頼関係…