甲の乙に対する債権が、丙によつて仮差押されても、民法第一五八条乃至第一六一条所定の停止の事由にあたらず、甲の乙に対する債権の時効は、進行を停止しない。
甲の乙に対する債権を丙が仮差押をした場合、甲の乙に対する債権につき、時効は進行を停止するか
民法158条,民法159条,民法160条,民法161条
判旨
第三者の申請による仮差押決定は、民法158条ないし161条(現行158条ないし161条)所定の時効停止事由には当たらず、また当該決定が取り消された場合には時効中断(現行の更新・完成猶予)の効力も生じない。
問題の所在(論点)
第三者による仮差押えがなされている期間、債権の消滅時効の進行は停止するか。また、取り消された仮差押えに時効中断の効力が認められるか。
規範
時効の進行は、法律に限定的に列挙された停止事由(民法158条〜161条)がある場合にのみ妨げられる。また、仮差押えによる時効中断の効力は、その決定が取り消された場合には認められない(旧民法154条・155条参照)。
重要事実
上告人の被上告人に対する債権について、第三者(D燃焼工業株式会社)の申請により仮差押決定がなされた。上告人は、この仮差押決定の取消判決が確定するまでの間は債権の行使が妨げられていたため、時効の進行が停止すると主張した。なお、当該仮差押決定は後に取り消されている。
あてはめ
仮差押えにより事実上権利行使が困難であったとしても、それは民法158条ないし161条が定める天災事変やその他の避けることのできない事変等による時効停止事由には当たらない。また、本件仮差押決定は上告人自ら陳述するように既に取り消されているため、仮にこれを時効中断事由(旧法)として構成したとしても、中断の効力を維持するための前提を欠く。
結論
第三者による仮差押えは時効停止事由に当たらず、また取り消された以上は時効中断の効力も生じないため、消滅時効は完成する。
実務上の射程
時効停止事由の限定列挙性を確認した事例。判決文からは詳細な事実関係(債権の種類等)は不明だが、強制執行等の法的障害が直ちに時効停止事由にならないという原則を示す。現行法下でも、時効の完成猶予・更新事由の解釈において参照されるべき一審級の判断を維持したものである。
事件番号: 昭和41(オ)1236 / 裁判年月日: 昭和45年11月6日 / 結論: 破棄自判
(省略)