代理人がした商行為による債権につき本人が提起した債権請求訴訟の係属中に、相手方が商法五〇四条但書に基づき債権者として代理人を選択したときは、本人の請求は、右訴訟が係属している間代理人の債権につき催告に準じた時効中断の効力を及ぼすものと解するのが相当である。
商法五〇四条但書に基づき相手方が債権者として本人または代理人を選択しうる場合における本人の請求と代理人の債権についての消滅時効の中断
商法504条,商法522条,民法147条,民法148条,民法153条
判旨
商法504条但書の適用により、相手方の選択によって代理人との法律関係が主張された場合、本人の提起した訴訟は代理人の債権について催告に準じた時効中断の効力を生じ、本人の訴訟係属終了から6か月以内に代理人が提訴すれば時効は確定的に中断する。
問題の所在(論点)
商行為の非顕名代理において、相手方が商法504条但書により代理人を選択した場合、それ以前に本人が提起していた訴訟は、代理人の債権について時効中断(現・時効の完成猶予等)の効力を有するか。
規範
商法504条但書の適用により相手方が代理人を選択した場合、本人の債権主張は最終的に排斥されるため、民法147条1号(旧法)の裁判上の請求としての確定的中断の効力は認められない。しかし、本人と代理人の債権は権利帰属においてのみ択一的で実体は単一であり、本人の提訴当時は有効な債権を有していたといえる。したがって、本人の請求は、その訴訟が係属している間、代理人の債権について暫定的中断事由である「催告」に準じた時効中断の効力を及ぼす。その結果、代理人は訴訟係属終了から6か月以内に提訴すれば時効を確定的に中断できる。
重要事実
組合D(本人)の組合員E(代理人)は、Dのためにすることを示さず(非顕名)、上告人との間で商行為である賃貸借契約を締結し敷金を差し入れた。契約終了後、上告人は契約の主辞がDであることを知らなかったため、商法504条但書に基づき、Dとの関係を否定しEとの法律関係を主張すること(代理人の選択)を決定した。一方で、債権者Bは、まずDを代位して敷金返還を提訴したが、訴訟係属中にEを代位して予備的に請求を追加した。上告人は、Eの敷金返還請求権は既に消滅時効にかかっていると主張した。
事件番号: 昭和38(オ)964 / 裁判年月日: 昭和42年11月17日 / 結論: 棄却
甲の乙に対する債権が、丙によつて仮差押されても、民法第一五八条乃至第一六一条所定の停止の事由にあたらず、甲の乙に対する債権の時効は、進行を停止しない。
あてはめ
本件では、上告人の選択によりEの債権が確定するが、それ以前に提起されたDの訴訟は「催告」に準ずる効力を有する。Dの訴訟は無権利者による請求ではなく、債権の実体的単一性や相関的性格に照らせば、訴訟係属中は継続的な権利主張が行われているといえる。もし中断を認めなければ、相手方は訴訟継続中に時効完成まで選択を遅らせることで、不当に債務を免れることが可能となり不合理である。したがって、BがDを代位して行った提訴によりEの債権にも催告の効力が及び、その後のEへの予備的追加(訴えの提起)によって時効は確定的に中断されたといえる。
結論
本人の提起した訴訟は代理人の債権につき催告に準じた時効中断の効力を生じるため、本件敷金返還請求権の消滅時効は中断されている。
実務上の射程
商法504条但書の「選択」により帰属が変動する場合の特則である。答案上は、時効中断(完成猶予)の「当事者」の範囲が問題となる場面で、実質的単一性を根拠に、形式上の原告以外の債権についても催告の効力を認めるための論拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)1046 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
債務者の第三債務者に対する債権の額が不明確であつても、その債権の最低限度の額を明示して発せられた転付命令は有効である。
事件番号: 昭和41(オ)1236 / 裁判年月日: 昭和45年11月6日 / 結論: 破棄自判
(省略)
事件番号: 昭和47(オ)434 / 裁判年月日: 昭和49年7月5日 / 結論: 棄却
民法四六七条の債務者の承諾は、債権の譲渡人又は譲受人のいずれかに対してすることを要する。