債務者の第三債務者に対する債権の額が不明確であつても、その債権の最低限度の額を明示して発せられた転付命令は有効である。
民訴法第六〇一条にいう「券面額」の意義
民訴法601条
判旨
差押命令および転付命令において、被差押債権の一部を特定して表示した場合であっても、命令の送達時点で当該債権が現に存在し、かつその額が指定された金額を超えているときは、その範囲で命令は有効である。
問題の所在(論点)
差押命令および転付命令において、被差押債権の一部が金額によって特定されている場合、命令送達時に当該金額以上の債権が残存していれば、その命令は有効といえるか。
規範
差押・転付命令の対象となる債権は、第三債務者にとって他の債権と区別できる程度に特定されている必要がある。また、転付命令が効力を生ずるためには、命令送達時に被転付債権が券面額通りに現存していることを要するが、一部転付の場合は、指定された範囲の債権が現存していれば足りる。
重要事実
債権者(転付債権者)が、債務者Dの上告人(第三債務者)に対する請負代金債権のうち、20万2078円を被差押・被転付債権として差押および転付命令を得た。上告人は、自身で材料代を直接支払った事実があること等を理由に、請負代金債権の存在や額を争ったが、原審は命令送達時に当該金額を超える債権の残存を認定した。
あてはめ
本件では、差押および転付命令において、訴外Dの上告人に対する請負代金債権のうち「20万2078円」を対象とすることが明示されていた。上告人は材料代の直接支払等を主張するが、原審によれば命令送達時点において当該請負代金債権は現に残存しており、かつその額は少なくとも20万2078円を超えていた。したがって、材料代の控除の有無にかかわらず、差し押さえられた金額の範囲で債権は確実に存在していたといえるため、特定および現存の要件を満たす。
結論
本件転付命令は、指定された金額の範囲において有効である。したがって、上告人の上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
債権の一部転付における「債権の特定」と「現存」の判断基準を示す。実務上、請負代金のように相殺や内払等により変動しうる債権を差し押さえる際、命令時点で特定額以上の残高があれば、その範囲で有効性が維持されることを確認した事例として活用できる。
事件番号: 昭和46(オ)27 / 裁判年月日: 昭和46年4月8日 / 結論: 棄却
債権の仮差押にも民訴法七四九条三項の規定の適用があり、右規定に基づき、仮差押命令を債務者に送達する前にその執行としてこれを第三債務者に送達した場合においても、仮差押の効力は、第三債務者に対する送達の時に生ずる。
事件番号: 昭和46(オ)521 / 裁判年月日: 昭和49年10月24日 / 結論: 棄却
第三債務者が債権仮差押命令の送達を受ける前に債務者に対し債務支払のために小切手を振り出していた場合には、右送達後にその小切手が支払われたとしても、第三債務者は右債務の消滅を仮差押債権者に対抗することができる。