第三債務者が債権仮差押命令の送達を受ける前に債務者に対し債務支払のために小切手を振り出していた場合には、右送達後にその小切手が支払われたとしても、第三債務者は右債務の消滅を仮差押債権者に対抗することができる。
債権仮差押命令送達前に第三債務者が債務支払のために振り出した小切手が右送達後に支払われた場合と民法四八一条一項
民法481条1項,民訴法598条,民訴法750条3項
判旨
債務者が仮差押命令の送達を受ける前に、原因債権の支払のために小切手を交付していた場合、送達後にその小切手の支払がなされたとしても、仮差押命令の効力は及ばない。
問題の所在(論点)
債権の支払のために小切手が交付された後、その小切手が現金化される前に当該債権が差し押さえられた場合、第三債務者はその後の小切手の支払による債権の消滅を差押債権者に対抗できるか。差押(仮差押)の効力の範囲が問題となる。
規範
債務者が、債権に対する差押(仮差押)命令の送達を受ける前に、当該債権の支払のために代金相当額の小切手を振り出し交付していた場合には、その後に小切手の支払(現金化)がなされたとしても、差押等の効力は及ばない。この場合、第三債務者は小切手の支払による原因債権の消滅を差押債権者に対抗することができる。
重要事実
債権者(上告人)は、債務者Dの第三債務者(被上告人)に対する工事代金債権に対し、仮差押命令およびその後の転付命令を得た。しかし、第三債務者は仮差押命令が送達される前日に、代金支払のためにDの代理受領権者Eに対し小切手を交付していた。その後、仮差押命令が送達され、その後にEが小切手を呈示して銀行から支払を受けた。債権者は、送達後の支払は無効であり、転付命令に基づき工事代金の支払を求めて提訴した。
あてはめ
本件では、被上告人が仮差押命令の送達を受けたのは昭和43年9月8日であるが、その前日である同月7日に工事代金支払のための小切手をEに交付している。小切手の交付は事実上の支払の準備として完了しており、送達後に銀行で現実の支払がなされたとしても、それは交付済みの小切手に基づく決済にすぎない。したがって、仮差押の効力は当該支払には及ばず、被上告人は工事代金債権が消滅したことを上告人に対抗できるといえる。
結論
工事代金債権は消滅しており、その後に発せられた転付命令は効力を生じない。したがって、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
原因債権の支払のために小切手や手形が交付された場合、実務上、原因債権の支払は「決済」を解除条件として猶予されているにすぎないが、差押との優劣関係においては「交付時」を基準に第三債務者を保護する。原因債権の支払に代えて有価証券が先行して交付されている事例全般に射程が及ぶ。
事件番号: 昭和46(オ)115 / 裁判年月日: 昭和46年11月19日 / 結論: 棄却
債権の仮差押がされた場合において、第三債務者が債務者に対し反対債権を有していたときは、その債権が仮差押後に取得されたものでないかぎり、右債権および被仮差押債権の弁済期の前後を問わず、両者が相殺適状に達しさえすれば、第三債務者は、仮差押後においても、右反対債権を自働債権として、被仮差押債権と相殺することができる。 (反対…