債権の仮差押がされた場合において、第三債務者が債務者に対し反対債権を有していたときは、その債権が仮差押後に取得されたものでないかぎり、右債権および被仮差押債権の弁済期の前後を問わず、両者が相殺適状に達しさえすれば、第三債務者は、仮差押後においても、右反対債権を自働債権として、被仮差押債権と相殺することができる。 (反対意見がある。)
債権の仮差押前から債務者に対して反対債権を有していた第三債務者が右反対債権を自働債権として被仮差押債権を受働債権としてする相殺の効力
民法511条,民訴法598条1項,民訴法750条2項
判旨
債権の仮差押えを受けた第三債務者は、仮差押え前に取得した反対債権であれば、被差押債権との弁済期の前後を問わず、相殺適状に達することにより相殺をもって差押債権者に対抗できる。
問題の所在(論点)
民法511条(旧法下)の解釈に関し、債権の仮差押えがなされた場合において、第三債務者が差押え前に取得した自働債権の弁済期が、受働債権の弁済期よりも後に到来する場合であっても、相殺をもって差押債権者に対抗できるか。
規範
債権が差し押えられた場合(仮差押えを含む)、第三債務者が債務者に対し、差押え前に取得した反対債権を有していたときは、自働債権(反対債権)及び受働債権(被差押債権)の弁済期の前後を問わず、両者が相殺適状に達しさえすれば、第三債務者は差押後においても相殺をもって差押債権者に対抗することができる。
重要事実
債権者(上告人)は、債務者(訴外会社)が第三債務者(被上告人)に対して有する預託金返還債権を仮差し押さえした。これに対し、第三債務者は、仮差押え前に債務者に貸し付けていた金員債権(反対債権)を自働債権として、仮差押え後に相殺の意思表示をした。なお、本件では受働債権の弁済期(昭和41年9月22日)が、自働債権の弁済期(同年9月30日)よりも先に到来していた。
あてはめ
第三債務者が仮差押えより前に取得した貸付金債権は、差押後に取得されたものではない。自働債権の弁済期が受働債権のそれより後であっても、弁済期の前後を問わず相殺を認めるべきとする大法廷判決(昭和45年6月24日)の法理は、仮差押えの場合にも妥当する。本件では、自働債権の弁済期到来により相殺適状が生じた後に相殺の意思表示がなされており、相殺の遡及効により被差押債権は消滅したといえる。
結論
第三債務者は、自働債権の弁済期が後である場合でも、相殺をもって差押債権者に対抗できるため、差押債権者の請求は認められない。
実務上の射程
無制限説(弁済期前後不問)を採用した重要判例である。現行民法511条2項の規定の根拠となっており、答案上は差押えと相殺の優劣が問題となる場面で、第三債務者の担保的期待を保護する趣旨から、差押え前に取得した債権であれば弁済期の先後を問わず相殺可能である旨を述べる際に使用する。
事件番号: 昭和46(オ)457 / 裁判年月日: 昭和51年11月25日 / 結論: 棄却
手形割引依頼人が仮差押の申請を受けたときは通知催告がなくても銀行に対し割引手形の買戻債務を負い直ちに弁済する旨の銀行取引約定書による合意に基づいて手形割引がされた場合に、割引依頼人の債権者が割引依頼人の銀行に対する債権につき仮差押をし差押・転付命令を得たときは、銀行は、特段の事情のない限り、右仮差押の申請があつた時に割…
事件番号: 昭和41(オ)1236 / 裁判年月日: 昭和45年11月6日 / 結論: 破棄自判
(省略)