一 土地の使用収益をなすべき契約上の債権に基き、第三者に対し直接妨害排除の請求をすることはできない。 二 仮処分申請を理由なしとして却下した以上、保証を立ててもなお仮処分を命ずべからずと判断したものと解すべきである。
一 土地の使用収益を目的とする債権に基く妨害排除請求の許否 二 仮処分申請を理由なしとして却下した裁判と民訴第七四一条第二項
民法第3編第1章,民訴法741条2項
判旨
債権は契約当事者間でのみ効力を有する相対的な権利であり、第三者の侵害に対して損害賠償を請求できる余地はあるが、債権そのものに基づいて直接に妨害排除を請求することはできない。
問題の所在(論点)
土地の使用収益を目的とする債権を有する者が、契約当事者ではない第三者による侵害に対し、当該債権自体に基づいて直接に妨害排除を請求することができるか。
規範
債権契約は特定人間の合意に基づき、債務者に対してのみ一定の給付を請求し得る権利を創設するものである。債権は第三者の行動の自由を制限する排他性を有しないため、第三者の侵害に対しては損害賠償の請求を認める限度で不法行為の成立が肯定され得るに留まり、債権そのものに基づく妨害排除請求権は認められない。
重要事実
上告人は、訴外会社との契約により石灰石山の地上・地下にわたる土地の使用収益権(債権)を取得し、当該土地を占有していると主張した。これに対し、契約の当事者ではない第三者である被上告人が、当該地域(新鉱地域)に無断侵入して石灰石を採掘し、上告人の使用収益を妨害した。上告人は、債権に基づく妨害排除および占有権に基づく妨害の停止・予防を求めて仮処分を申請した。
あてはめ
上告人は土地の使用収益権を債権として取得したに過ぎない。債権は契約の当事者間においてのみ効力を生じるものであり、第三者に対して直接に効力を及ぼしてその行動を制限する排他性はない。したがって、仮に侵害行為があったとしても、損害賠償請求の対象にはなり得るが、債権に基づく妨害排除請求を認めることはできない。また、占有権に基づく請求についても、原審において土地の占有事実が認められていないため、成立しない。
結論
債権者として第三者に対し妨害排除等の請求をすることは認められない。また、占有の事実が認められない以上、占有権に基づく請求も認められず、本件申請は棄却される。
実務上の射程
本判決は債権の相対性を強調し、物権的請求権のような排他性を否定した。ただし、不動産賃借権については、対抗要件(登記や建物所有等)を具備している場合に限り、本判決の法理を離れて妨害排除請求が認められる余地がある(不動産賃借権の物権化)。答案上は、対抗要件のない一般債権に基づく妨害排除の可否を論じる際の否定的な根拠として用いる。
事件番号: 昭和24(オ)58 / 裁判年月日: 昭和28年12月14日 / 結論: 棄却
債務者がすでに自ら権利を行使している場合には、その行使の方法または結果の良いと否とにかかわらず、債権者は債権者代位権を行使することはできない。