寺院主管者は、寺院所有の不動産を適法に処分する権限を取得しない限り、個人の資格で、これを処分することはできない。
寺院所有の不動産と主管者個人によるその処分の能否。
旧宗教法人令11条2項,旧宗教法人令11条3項
判旨
宗教法人が所轄庁の承認を得ずに行った不動産の処分は、相手方が善意無過失であっても無効であり、主管者個人が履行義務を負うとしても法人の所有権が当然に移転することはない。
問題の所在(論点)
宗教法人令に基づく承認を欠く不動産処分の効力は、相手方の善意無過失によって維持されるか。また、主管者個人の責任規定(履行義務)によって法人から相手方への所有権移転が正当化されるか。
規範
1.宗教法人令11条2項(現在の宗教法人法25条等に相当)に違反する不動産処分は、法人の内部手続(承認等)を欠く場合、取引の相手方が善意無過失であっても無効である。 2.同条3項が定める主管者個人の履行責任は、主管者が個人として適法に処分権限を取得しない限り、法人所有の不動産を有効に譲渡する根拠とはならず、履行不能として処理されるべきである。
重要事実
宗教法人である上告人は、所轄庁(主管者)の承認を得ないまま、被上告人B1との間で土地の売買契約を締結し、登記を移転した。原審は、相手方が善意無過失であること、及び主管者が個人として履行義務を負うことを理由に、当該売買に基づく所有権移転登記を有効と判断したため、上告人がその抹消を求めて上告した。
あてはめ
1.宗教法人令11条2項は強行規定であり、承認を欠く売買は客観的に無効である。相手方が善意無過失であっても、法人の目的や公益性に鑑み、この無効は妨げられない。 2.同条3項の主管者個人の責任は、法人の行為が無効となった場合に個人が負う損害賠償や履行の責任を定めたに過ぎない。本件では、主管者個人が当該土地の適法な処分権限を法人から取得した事実はなく、法人の所有権を相手方に移転させることは法的・物理的に不可能であり、本件登記は実体関係を伴わない無効なものである。
結論
所轄庁の承認を欠く売買は無効であり、主管者個人の責任を理由に登記の有効性を認めた原判決は違法として破棄・差し戻されるべきである。
実務上の射程
代表権の制限が法定されている宗教法人の取引において、相手方の保護(表見代理等)よりも法人の財産基盤維持を優先する判断枠組みとして重要。現在の宗教法人法における公告手続を欠く行為の効力(同法25条)を検討する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和38(オ)160 / 裁判年月日: 昭和41年3月18日 / 結論: 棄却
所有権保存登記およびその後順次経由された所有権移転登記の抹消登記手続請求訴訟において、最終登記名義人を被告とする請求について敗訴の判決があつた場合でも、その余の被告らに対する請求は訴の利益を失うものではない。
事件番号: 昭和38(オ)164 / 裁判年月日: 昭和39年5月26日 / 結論: 棄却
登記義務者の意思に基づかない登記であつても、現在の実体的権利関係に符合するものであるかぎり、右意思に基づかないとして、当該登記の抹消登記請求をすることは理由がない。
事件番号: 昭和34(オ)1280 / 裁判年月日: 昭和36年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、第一の譲受人は、自らが未だ所有権移転登記を備えていない以上、第二の譲受人に対して所有権の取得を対抗することができない。これは、第二の譲受人の有する登記が有効であるか否かを問わない。 第1 事案の概要:上告人は、本件不動産を譲り受けたと主張しているが、未だその所有権取得の登…
事件番号: 昭和32(テ)22 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告であっても、その実質が原審の事実認定を非難するにすぎない場合は、特別上告の適法な理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人が憲法違反を理由として特別上告を提起したが、その主張の内容は、原判決が行った事実認定の手続きや結果に対する不服申し立てであった。 第2 問題の所在(論点…