自動車の割賦売買契約で、割賦金遅滞のときは契約を解除され、買主は自動車を返還する外、売買代金相当額の違約金を支払うものとする特約がされていても、該特約を一概に民法第九〇条により無効とすることはできない。
自動車の割賦売買契約における違約金の特約が民法第九〇条により無効といえないとされた事例。
民法420条,民法90条,割賦販売法6条
判旨
月賦販売契約における違約金特約は、直ちに公序良俗に反して無効となるものではなく、また、訴訟当事者が主張していない別個の特約を根拠に支払を命じることは、釈明権の行使や審理不尽の観点から違法である。
問題の所在(論点)
1. 月賦販売契約における違約金特約が民法90条により当然に無効となるか。2. 当事者が請求原因として明示的に依拠していない別個の特約に基づき、裁判所が支払を命じることが許されるか(釈明義務・審理不尽の成否)。
規範
1. 契約上の違約金特約が公序良俗(民法90条)に反するか否かは、当該特約の内容や諸般の事情を総合的に考慮して判断されるべきであり、直ちに一概に無効と断じることはできない。2. 裁判所は、当事者が請求の根拠として主張していない別個の特約に基づき責任を認める場合、訴旨を明らかにし、主張立証の機会を与える必要がある。
重要事実
上告人会社(A1)と被上告人の間で締結された月賦販売契約には、違約金(過怠金)の特約が含まれていた。第一審・原審は、当該特約自体は民法90条により無効とはならないと判断。その上で、原審は、元々の販売契約とは別個に作成された「念書」に基づく特約を根拠として、上告人会社及び上告人(A2)に対し、過怠金約28万円の連帯支払を命じた。しかし、被上告人が訴訟において当該「念書」の特約を請求原因として主張していたか、またA2が連帯責任を負う根拠が示されていたかは記録上不明確であった。
あてはめ
1. 違約金特約については、原審が特約の内容を検討した上で一概に公序良俗違反ではないとした判断は相当である。2. 一方、原審が認容の根拠とした「念書」に基づく特約は、本件販売契約とは別個の契約である。記録上、被上告人がこの特約を請求の原因として構成していたか、また、会社ではない個人(A2)がなぜ連帯責任を負うのかという法的根拠の主張が明確ではない。裁判所がこれらを明らかにしないまま認容することは、判決に影響を及ぼす審理不尽または理由不備の違法がある。
結論
違約金特約自体の有効性は認めるが、当事者の主張に基づかない特約によって過怠金の支払を命じた部分は違法であるため、当該部分を破棄し原審に差し戻す。
実務上の射程
民法90条の適用に関する判断枠組みを示すとともに、民事訴訟における弁論主義・釈明権の限界を示唆する。実務上、請求の根拠となる契約が複数ある場合、裁判所は当事者の主張する「訴旨」を厳密に特定すべきであり、主張のない別契約を勝手に適用してはならないという教訓として機能する。
事件番号: 昭和36(オ)177 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商事売買における代金支払遅延に対し、日歩20銭(年利73%)の遅延損害金を付す特約は、公序良俗に反する程度に過酷なものとは認められず、有効である。 第1 事案の概要:商事売買において、買主(上告人)が代金の支払を怠った場合、残代金に対し100円につき日歩20銭(年利73%)の遅延損害金を付して支払…