書証の成立について自白があるとした判決は、その自白が撤回され自白の拘束力がないとしても、他の証拠によつても右成立を認めうるとしている以上、判決の結論に影響を及ぼすべき違法をきたさない。
自白の拘束力の喪失と他の証拠による証明。
民訴法257条
判旨
裁判官の交代後に従前の口頭弁論の結果を陳述し、弁論を終結させた上で判決を下した手続は適法であり、判決書の誤記が判文上容易に判明する場合には理由齟齬の違法には当たらない。
問題の所在(論点)
裁判官の交代に伴う弁論の更新手続の適否、および判決書における事実記載の誤りが理由齟齬の違法(判決に影響を及ぼすべき不備)に該当するか。
規範
裁判官が交代した場合であっても、更新後の口頭弁論において当事者が従前の口頭弁論の結果を陳述した上で弁論を終結し、当該弁論に関与した裁判官により判決がなされたのであれば、民事訴訟法の規定(旧民訴法187条、現行249条)に違反しない。また、判決書における金額の記載等の誤りが、判決文全体からみて単なる誤記であることが容易に判別できる場合には、理由齟齬の違法は認められない。
重要事実
上告人らは、原審において裁判官の構成に変更があったにもかかわらず適切な更新手続がなされなかったこと、および判決文中に支払済みの金額について「半額」との誤った記載があることが理由齟齬に当たるとして上告した。原審の第3回口頭弁論調書によれば、交代後の3名の裁判官の出席のもとで、双方代理人が従前の口頭弁論の結果を陳述した上で弁論が終結されており、判決もその3名によってなされていた。
あてはめ
更新手続について、口頭弁論調書により3名の裁判官が出席し、当事者が従前の弁論結果を陳述した事実が認められるため、手続的違法はない。また、金額の記載については、当事者間に争いがない1万5665円という正しい金額が判示されている箇所があり、「半額」という表現が単なる誤記であることは判文上容易に判別可能である。したがって、論理的な矛盾や理由の欠落といった違法は存在しない。証拠の成立に関しても、自白の拘束力の有無にかかわらず、他の証言によって成立を認め得ると判断されており、結論に影響しない。
結論
本件上告を棄却する。原審の裁判手続および判決の理由付けに、判決を破棄すべき違法は認められない。
実務上の射程
裁判官の更新手続が実務上どのように記録され、適法と評価されるかの基準を示す。答案上は、裁判官の交代があった場合に「従前の弁論結果の陳述」があれば原則として適法とされる根拠として活用できる。また、些細な誤記が直ちに理由齟齬とはならない点についても参照し得る。
事件番号: 昭和37(オ)430 / 裁判年月日: 昭和38年3月19日 / 結論: 棄却
書証の記載内容を判文と対照してみて採否の部分を了知しうれば足り、各採否の部分を判文上明示しなくても違法でない。
事件番号: 昭和39(オ)21 / 裁判年月日: 昭和39年9月18日 / 結論: その他
裁判官の更迭後更新手続がなされず判決された場合は、民訴法第三九五条第一項第一号の上告理由にあたる。