新憲法施行前における刑務所作業場における負傷について国家賠償の請求が排斥された事例。
判旨
口頭弁論調書の記載につき、新たな主張を含まない弁論の要領が記載されていなくても違法ではなく、また、尋問調書の誤記が判決に影響を及ぼさない場合には上告理由とならない。
問題の所在(論点)
新たな主張を含まない弁論の要領が口頭弁論調書に記載されていないこと、および尋問調書に誤記があることが、民事訴訟法上の違法として判決の破棄事由となるか。
規範
口頭弁論の期日において行われた弁論が新たな主張を含むものでない場合には、当該弁論の要領が口頭弁論調書に記載されていなくても、民事訴訟法上の違法(調書作成義務違反等)には当たらない。また、尋問調書等の訴訟記録に誤記があったとしても、それが判決の結果に影響を及ぼすものでない限り、上告理由としての違法性は認められない。
重要事実
上告人は、第一審および原審において損害賠償を請求したが、いずれも棄却された。上告人は、原審の本人尋問調書に誤記がある点、および昭和37年4月18日の口頭弁論期日において尋問終了後に行われた弁論の要領が調書に記載されていない点を捉え、手続的違法があるとして上告した。なお、当該弁論の内容は新たな主張を含むものではなかった。
あてはめ
まず、口頭弁論調書の記載について、当該期日において行われた弁論は新たな主張を含むものではなかった。調書には主要な審理の経過を記載すべきであるが、既に出尽くした主張を繰り返すのみの弁論であれば、その要領が欠けていても手続上の違法はないと解される。次に、尋問調書の誤記については、その存在自体は認められるものの、当該誤記の内容を検討しても、原判決の結論(損害賠償請求の棄却)を左右するほどの重要性はない。したがって、判決に影響を及ぼす違法とはいえない。
結論
本件上告は棄却される。調書の不備や誤記が判決に影響を及ぼさない以上、適法な上告理由とはならない。
実務上の射程
訴訟手続の瑕疵を理由とする上告において、調書の記載漏れや誤記が直ちに違法となるわけではなく、主張の内容(新規性の有無)や判決への影響度という観点から限定的に解釈する実務上の指針を示すものである。
事件番号: 昭和37(オ)811 / 裁判年月日: 昭和38年11月19日 / 結論: 棄却
第二審における訴訟手続が違法でない以上、第一審の訴訟手続の違法を上告理由とすることはできない。