判旨
判決書に記載された人名の誤記が明白な場合、それは単なる表記上の誤りであって、事実認定そのものの違法を意味するものではない。
問題の所在(論点)
判決書における証人名の誤記(DをEと記載)や、日時の「頃」という表記が、事実認定を違法とする事由になるか。
規範
判決書の記載に明白な誤記がある場合であっても、それが証拠資料の趣旨や事実認定の根拠を実質的に損なわない限り、適法な事実認定を妨げるものではない。
重要事実
上告人は、原判決が証拠として挙示した証人の氏名(D)を「E」と誤記している点や、損害発生日時に関する認定(昭和29年11月15日頃)に不明確さがある点などを挙げ、原判決の事実認定に違法があると主張して上告した。
あてはめ
まず、証人名については、原審証人Dの証言中に認定事実に符合する供述が存在し、原審がこれを資料としたことは適法である。判決理由中の「E」という記載は「D」の明白な誤記にすぎない。次に、日時については「11月15日頃」との記載は「11月15日」を指す意味と解される。したがって、いずれも判決の結果に影響を及ぼすべき違法とはいえない。
結論
明白な誤記や表現のゆらぎがあっても、事実認定の基礎となる証拠の適格性が認められる限り、原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
民事訴訟における判決書の「更正」(民訴法257条等)に関連する判断であり、単なる形式的な誤字・脱字が直ちに理由不備や事実誤認の違法を構成しないことを示す。答案上は、判決の瑕疵が重大なものか、単なる表記上の錯誤に留まるかを区別する際の考慮要素として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)298 / 裁判年月日: 昭和38年2月26日 / 結論: 棄却
右公図の証拠判断に違法があつても、その余の資料のみをもつて原審の認定が是認できるから、右違法は判決に影響を及ぼすこと明らかなものということはできない。