右公図の証拠判断に違法があつても、その余の資料のみをもつて原審の認定が是認できるから、右違法は判決に影響を及ぼすこと明らかなものということはできない。
境界確定の資料とされた公図の証拠判断の違法と判決に及ぼすべき影響の有無。
民訴法185条,民訴法394条
判旨
原判決の一部に証拠判断の誤りがあり、事実認定の手続に違法があったとしても、他の適法な証拠資料によって判決の結論が維持できる場合には、その違法は判決に影響を及ぼすものとはいえない。
問題の所在(論点)
事実認定の基礎となった証拠の一部に判断の誤りがある場合、その違法は直ちに「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」として破棄事由となるか。
規範
上告理由となる「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」(民事訴訟法312条3項、旧494条等参照)があるというためには、当該違反がなければ異なる結論に至った可能性があることを要する。証拠判断の誤り等の違法があっても、爾余の証拠資料のみをもって判決の結論(事実認定の帰結)を合理的に導き出せる場合には、当該違法は「判決に影響を及ぼすこと明らかなもの」とは認められない。
重要事実
山林の所有権が争われた事案において、原審は「切図」という古地図上の谷川の所在地等に関する推測を交え、係争地が被上告人所有の山林に該当すると認定した。しかし、その切図の記載の一部は他の確定事実と矛盾しており、原審が切図上の境界線に谷川の存在を想定した判断には証拠判断の誤り(違法)があった。上告人は、この事実認定の違法を理由に上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、原審は切図上の谷川の所在に関する判断を誤っており、その点において事実認定の資料供出には違法がある。しかし、原審は切図のみならず、証人尋問等の挙示証拠、係争地の管理占有状態、周辺山林との位置関係、地形等の諸般の事情を総合して所有権の帰属を認定している。これらの切図以外の資料を検討すると、これらのみによっても原審の結論(係争地が被上告人の所有に属するという認定)を十分是認することができる。
結論
原判決の違法は判決に影響を及ぼすものとはいえないため、上告を棄却する。
実務上の射程
事実認定における経験則違反や証拠判断の誤りを主張する際の、破棄自判・差し戻しの要件(判決影響性)に関する判断枠組みとして活用できる。答案上は、一部の事実誤認を指摘するだけでなく、それが結論を左右する核心的な部分であったか否かを論述する際に用いる。
事件番号: 昭和38(オ)473 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
当事者が真正に成立したものとして提出した書証の一部の成立を相手方が争つた場合、原審がその成立に争いがないものとして判断の資料に供しても、当該当事者がその違法を主張して上告する利益はない。