書証の記載内容を判文と対照してみて採否の部分を了知しうれば足り、各採否の部分を判文上明示しなくても違法でない。
書証の一部分を採用し他の部分を排斥するにあたり、どの部分を採用しどの部分を排斥するかを明示しなくても違法がないとされた事例。
民訴法191条
判旨
裁判所が書証の記載の一部を採用し、他の一部を排斥する際、判決文との対照によりその範囲が了知可能であれば、必ずしも採用・排斥の箇所を明示する必要はない。
問題の所在(論点)
裁判所が一個の書証の記載の一部を採用し、他の一部を排斥する場合において、その採用・排斥の範囲を判決文中に明示する必要があるか。
規範
自由心証主義(民事訴訟法247条)のもと、裁判所は証拠の証拠力を自由に評価できる。一つの書証の記載内容に、事実認定の資料に供すべき部分と排斥すべき部分が混在する場合、判決文の認定事実や証拠判断の記載と対照して、どの部分を採用しどの部分を排斥したかを客観的に了知し得るのであれば、必ずしもどの部分を採用しどの部分を排斥するかを明示することを要しない。
重要事実
上告人から被上告人に宛てた書簡(甲七号証)には、(1)上告人が被上告人に一定額を支払うと約束する旨の記載と、(2)鉄筋代金を債務から控除して第三者に支払うよう求める旨の記載があった。原審は、この書証を一方において事実認定の資料としつつ、他方で排斥しているかのような記載をしていたため、上告人は理由齟齬の違法を主張した。
事件番号: 昭和37(オ)447 / 裁判年月日: 昭和40年2月19日 / 結論: 破棄差戻
証言のみにより、成立に争のない書証(借金の内払を記載した振替伝票)を無視した事実認定は、理由不備の違法がある。
あてはめ
本件の甲七号証について、判決文の記載と対比すれば、(1)の支払約束の事実は認定資料として採用し、(2)の控除の主張については措信できないとして排斥している趣旨であることは容易に窺い知ることができる。このように、判文全体との対照によって採用・排斥の範囲を了知できる以上、明示的な区分けの記載がなくても、理由齟齬等の違法があるとはいえない。
結論
書証の一部採用・一部排斥は、判決文からその範囲が了知可能であれば適法である。原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
証拠評価の合理性が問われる場面、特に「理由不備」や「理由齟齬」の不服申し立てに対する反論として有用。一つの書面内に有利・不利な事実が混在する場合の認定手法を正当化する根拠となる。
事件番号: 昭和38(オ)122 / 裁判年月日: 昭和38年10月4日 / 結論: 棄却
本案の裁判に対する上訴とともに訴訟費用の裁判に対し不服が申し立てられた場合においても、本案の裁判に対する上訴が理由のないときは、訴訟費用の裁判に対する不服の申立は許されない。