不動産所有者が朝鮮から内地に帰還して不動産管理人に対し当該不動産の返還を請求したときに右管理人がその不動産の収益を計算して所有者に支払うとの約定のあつた場合には、右不動産収益返還請求権の消滅時効は、前示返還請求のなされた時から進行する。
不在中の不動産管理人に対する収益返還請求権の消滅時効の起算点。
民法166条1項
判旨
収益返還債務が、債権者の帰還および財産の返還請求時に計算して支払う旨の約定である場合、当該債務は不確定期限付き債務であり、消滅時効は期限が到来した時から進行する。
問題の所在(論点)
権利者が帰還して返還請求をした時に支払うとの約定がある債務において、消滅時効の起算点となる「権利を行使することができる時」をいつと解すべきか。
規範
消滅時効の起算点となる「権利を行使することができる時」(民法166条1項)について、不確定期限付き債務の場合には、特段の事情のない限り、当該期限が到来した時を指すものと解するのが相当である。
重要事実
被上告人の前々主Eは、本件不動産等の管理を上告人の先代Fらに依頼していた。その際、不動産から生じる収益の返還債務については、権利者であるGが朝鮮から内地に帰還して不動産等の財産の返還を請求したときに、これらを計算して支払う旨の約定がなされていた。その後、Gが帰還して返還請求を行ったため、収益返還請求権の消滅時効の起算点が問題となった。
あてはめ
本件における収益返還債務は、Gが内地に帰還し、かつ不動産の返還を請求した時という、将来発生することは確実だがその時期が不確定な事実を期限とする不確定期限付き債務であると認められる。したがって、民法166条の規定に基づき、当該債務の消滅時効は、約定された不確定期限が実際に到来した時、すなわちGが帰還して返還請求をした時から進行を開始すると解するのが法解釈として正当である。
結論
収益返還債務の消滅時効は、Gが帰還して返還請求をした時から進行する。したがって、当該請求時を基準として時効期間が経過していない限り、時効は完成しない。
実務上の射程
不確定期限付き債務の消滅時効の起算点を「期限到来時」とした基本的な判例。答案上は民法166条の解釈において、履行遅滞(民法412条2項の「期限の到来したことを知った時」等)との違いに注意しつつ、客観的に行使が可能となった時点を特定する際に用いる。
事件番号: 昭和38(オ)842 / 裁判年月日: 昭和43年6月27日 / 結論: 棄却
一、登記官吏の過失により虚偽の所有権移転登記がされ、これを信頼して土地を買い受け、その地上に建物を建築したものが、右事実関係を知り自己が右土地の所有権を取得しえないことを知つたときは、その時に、右建物を収去することによつて生ずる損害についてもその損害および加害者を知つたものと解するのが相当である。 二、不法行為に基づく…
事件番号: 昭和46(オ)1035 / 裁判年月日: 昭和47年4月13日 / 結論: 棄却
民法四二六条にいう取消の原因を覚知するとは、債務者が債権者を害することを知つて当該法律行為をした事実を取消権者において知ることを意味し、単に取消権者が詐害の客観的事実を知るだけでは足りず、債務者に詐害の意思のあることをも知ることを要する。
事件番号: 昭和31(オ)368 / 裁判年月日: 昭和33年11月6日 / 結論: 破棄差戻
再売買の予約完結権の消滅時効は、権利の行使につき特に始期を定め、または停止条件を附したものでない限りは、予約完結権の成立した時から進行する。