民法四二六条にいう取消の原因を覚知するとは、債務者が債権者を害することを知つて当該法律行為をした事実を取消権者において知ることを意味し、単に取消権者が詐害の客観的事実を知るだけでは足りず、債務者に詐害の意思のあることをも知ることを要する。
詐害行為取消権の消滅時効の起算点
民法426条
判旨
詐害行為取消権の短期消滅時効の起算点となる「取消しの原因を知った時」とは、債務者の詐害意思まで知った時を指すが、特段の事情がない限り、詐害の客観的事実を知った際に詐害意思も知ったものと推認される。
問題の所在(論点)
詐害行為取消権の消滅時効(改正前民法426条)の起算点である「債権者が取消しの原因を知った時」の意義、および債務者の「詐害意思」の認識が必要か。また、その認識の有無をどのように判断すべきか。
規範
民法426条(改正前)にいう「取消の原因を覚知した時」とは、債権者が、詐害行為取消権発生の要件たる事実、すなわち債務者が債権者を害することを知って当該法律行為をした事実(詐害意思)を知ったことを意味する。単に詐害の客観的事実を知っただけでは足りない。けだし、債務者の詐害意思を知らなければ権利行使を期待し得ないからである。もっとも、通常の債権者は債務者の資産状態等に知識を有するのが常であるから、特段の事情がない限り、客観的事実を知った時に詐害意思も知ったと推認するのが相当である。
重要事実
債権者である被上告人は、債務者が行った本件抵当権設定契約および代物弁済予約について詐害行為取消権を行使した(反訴提起)。これに対し、債務者側(上告人)は、被上告人が反訴提起の2年以上前(旧法下の短期時効期間)に当該行為の存在を知っていたとして、消滅時効を援用した。第一審および原審は、被上告人が当該期間以前に債権者を害する事実(客観的事実および詐害意思)までを覚知していたとは認められないと判断した。
あてはめ
本件において、被上告人が昭和41年7月13日の反訴提起から2年以上前の時点で、本件抵当権設定等の行為が自己を害する事実までを覚知していた事実は認められない。原則として詐害意思の認識が必要とされるが、本件ではそもそも「客観的な詐害の事実」自体を覚知していたという認定もなされていない。したがって、債務者の詐害意思を推認すべき基礎となる客観的事実の認識すら欠けている以上、消滅時効は進行していないと評価される。
結論
詐害行為取消権の消滅時効は完成しておらず、上告人の時効抗弁は排斥される。被上告人による詐害行為取消請求を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
現行民法426条1項の「債権者が取消しの原因を知った時」の解釈においても維持される。答案では、原則として「詐害意思の認識」まで必要としつつ、実務上の立証負担を考慮して「客観的事実の認識があれば詐害意思の認識も推認される」という二段構えの規範として提示するのが適切である。
事件番号: 昭和41(オ)837 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 棄却
民法第一六二条第二項にいう占有者の善意・無過失とは、自己に所有権があるものと信じ、かつ、そのように信ずるにつき過失のないことをいい、占有者において、占有の目的不動産に抵当権が設定されていることを知り、または、不注意により知らなかつた場合でも、ここにいう善意・無過失の占有者ということを妨げない。
事件番号: 昭和33(オ)1018 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐害行為取消権(民法424条1項)が認められるためには詐害行為時及び取消権行使時の双方で無資力である必要があるが、行為時の無資力があれば行使時の無資力は推定され、相手方が資力回復を主張立証すべきである。 第1 事案の概要:債権者である被上告人が、債務者Dによる詐害行為の取消しを求めて提訴した事案。…
事件番号: 昭和36(オ)420 / 裁判年月日: 昭和37年4月27日 / 結論: 棄却
登記の時に悪意でも、それに先立つ本契約当時に善意であれば、詐害行為は成立しない。
事件番号: 昭和36(オ)135 / 裁判年月日: 昭和37年11月16日 / 結論: 棄却
債務の目的物の価格が履行不能後値上りをつづけて来た場合において、履行不能となつた際債務者がその事情を知りまたは知りえたときは、債務者が口頭弁論終結時の価格まで値上りする以前に目的物を他に処分したであろうと予想された場合でないかぎり、右終結時において処分するであろうと予想された場合でなくても、債権者は、右終結時の価格によ…