民法四二六条にいう「債権者カ取消ノ原因ヲ覚知シタル時」とは、債権者が特定の具体的な詐害行為の存在を知つた時を指すものと解すべきである。
民法四二六条にいう「債権者カ取消ノ原因ヲ覚知シタル時」の意義
民法426条
判旨
詐害行為取消権の短期消滅時効の起算点である「債権者が取消しの原因を知った時」とは、債権者が特定の具体的な詐害行為の存在を知った時を指す。
問題の所在(論点)
詐害行為取消権の短期消滅時効の起算点である、民法426条(改正前)の「債権者カ取消ノ原因ヲ覚知シタル時」の意義、およびその判断基準。
規範
民法426条(現426条1項前段)にいう「債権者が取消しの原因を知った時」とは、債権者が特定の具体的な詐害行為の存在を知った時を指すものと解するのが相当である。
重要事実
債権者(被上告人)が債務者Dの所有物件に対し仮差押えを執行したところ、当該物件の譲受人と主張する上告人が第三者異議の訴えを提起した。この訴訟に至るまで、債権者は債務者Dと上告人との間で締結された本件各契約(詐害行為)の存在を認識していなかった。
あてはめ
事件番号: 昭和46(オ)1035 / 裁判年月日: 昭和47年4月13日 / 結論: 棄却
民法四二六条にいう取消の原因を覚知するとは、債務者が債権者を害することを知つて当該法律行為をした事実を取消権者において知ることを意味し、単に取消権者が詐害の客観的事実を知るだけでは足りず、債務者に詐害の意思のあることをも知ることを要する。
被上告人は、自らが行った仮差押えに対して上告人が第三者異議の訴えを提起するまでは、債務者Dと上告人との間の本件各契約(特定の具体的な詐害行為)の存在を知らなかった。したがって、当該訴えの提起時より前には「取消しの原因を知った」とはいえず、消滅時効は進行していないと解される。
結論
「取消しの原因を知った時」とは特定の具体的な詐害行為の存在を知った時であり、本件では第三者異議の訴えが提起されるまで時効は進行しない。
実務上の射程
消滅時効の起算点について、単に債務者が無資力であることの認識だけでは足りず、取り消すべき対象となる「特定の法律行為」の存在を認識することが必要であることを示した。答案上は、詐害行為取消権の行使が期間制限に抵触するか否かを論じる際の定義として使用する。
事件番号: 昭和34(オ)47 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐害行為取消権の行使において必要とされる「詐害の意思」とは、債務者が自己の行為により債権者を害する事実を認識していれば足り、特定の債権者を害する意図までは不要である。 第1 事案の概要:上告人(債務者)が特定の財産処分行為等を行ったところ、これが債権者を害する詐害行為に該当するとして、取消権が行使…
事件番号: 昭和35(オ)646 / 裁判年月日: 昭和37年10月12日 / 結論: 棄却
債権者が受益者を相手どつて詐害行為取消の訴を提起しても、債権につき消滅時効中断の効力を生じない。