土地を買い受けて地上に建物を建築所有していた者が、売主から当該売買契約が無権代理人によつてされたことを理由として土地所有権に基づき建物収去土地明渡請求訴訟を提起されて敗訴し、その確定判決に基づく強制執行を受けた場合において買主が、右訴訟は売主と無権代理人と称する者との共謀による違法行為であり、右違法行為の結果、土地所有権を取得できず、かつ、建物を収去しなければならなくなつたことによつて損害を受けたと主張するとき、その損害賠償請求権の消滅時効は、右判決確定の時から進行するものと解すべきである。
違法に建物収去土地明渡請求訴訟を提起され敗訴して該確定判決に基づく強制執行を受けた者の有する損害賠償請求権の消滅時効の起算点
民法724条
判旨
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、建物収去土地明渡請求の勝訴判決が確定し、義務負担による損害の発生および加害者を確知した時から進行する。
問題の所在(論点)
建物収去土地明渡義務の負担による損害賠償請求権において、民法724条(旧法)の消滅時効の起算点となる「損害及び加害者を知った時」はいつか。
規範
民法724条前段(現行法724条1号)にいう「損害及び加害者を知った時」とは、被害者が損害の発生および加害者が誰であるかを確知した時を指す。建物収去義務等の負担に基づく損害については、その義務を命ずる裁判が確定した時点をもって、損害の発生を確知したものと認めるのが相当である。
重要事実
上告人は、被上告人B1の代理人と称するB2から本件土地を買い受け、建物を築造した。しかし、B1から代理権の不在を理由に建物収去土地明渡訴訟を提起され、上告人敗訴の判決が昭和34年4月5日に確定した。上告人は、当該訴訟の係属中、B1とB2の間に使用関係があることを認識していた。その後、上告人はB1およびB2に対し、共同不法行為または使用者責任に基づき、土地を取得できず建物収去を余儀なくされた損害の賠償を求めて提訴したが、消滅時効の成否が争点となった。
あてはめ
上告人は、B1から提起された訴訟において、B2に代理権がないことを理由とする敗訴判決が確定したことにより、本件土地の取得不能および建物収去義務の負担という損害が発生したことを確知したといえる。また、訴訟係属中にB1・B2間の関係を知っていたことから、加害者が誰であるかも併せて確知していたといえる。したがって、遅くとも当該判決確定の日である昭和34年4月5日から時効が進行する。
結論
損害賠償請求権の消滅時効は、建物収去土地明渡を命ずる判決の確定時から進行し、本件請求権は時効により消滅している。
実務上の射程
他人の行為によって法的義務を負担させられたことによる損害賠償請求では、その義務を確定させる判決の確定時が時効の起算点となることを示した。実務上は、原因行為時ではなく、義務が法的に確定した時点を基準とする点で被害者保護に資する判断である。
事件番号: 昭和48(オ)1214 / 裁判年月日: 昭和49年9月26日 / 結論: 棄却
不法行為による受傷の後遺症が顕在化したのちにおいて、症状は徐々に軽快こそすれ、悪化したとは認められないなど、受傷したのちの治療経過が原審認定のとおり(原判決理由参照)である場合には、右後遺症が顕在化した時が民法七二四条にいう損害を知つた時にあたり、その時から後遺症に基づく損害賠償請求権の消滅時効が進行する。