船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効は,民法724条により,被害者が損害及び加害者を知った時から進行する
船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効の起算点
民法166条1項,民法724条,商法798条1項
判旨
船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、商法798条1項に規定がないため、民法724条(当時)に基づき、被害者が「損害及び加害者を知った時」から進行する。
問題の所在(論点)
船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効の起算点について、商法798条1項(旧法)は民法724条の特則として「衝突時」から進行すると解すべきか、あるいは民法724条の起算点に関する規定が適用されるか。
規範
商法798条1項(現行802条1項)は、船舶の衝突によって生じた債権の消滅時効期間を1年と定めているが、その起算点については規定していない。そのため、起算点は民法724条の特則に従い、被害者が損害及び加害者を「現実に認識」し、損害賠償請求に及ぶことが期待できるようになった時(損害及び加害者を知った時)と解すべきである。
重要事実
被上告人所有の漁船が、上告人所有の貨物船と衝突して損傷した。被上告人は上告人に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求したが、船舶衝突から1年以上が経過していた。船舶衝突による損害賠償請求権の消滅時効の起算点について、衝突時(客観的起算点)から進行するのか、あるいは被害者が損害及び加害者を知った時から進行するのかが争われた。
あてはめ
民法724条が消滅時効の起算点を「損害及び加害者を知った時」とした趣旨は、被害者が加害者を認識せず、賠償請求を期待できない間に時効が進行することを防ぐ点にある。船舶衝突の事案においても、この趣旨は同様に妥当する。商法798条1項は時効期間を1年に短縮する特則を設けたにすぎず、起算点について別段の定めを置いたものではない。したがって、同条に基づく短期消滅時効であっても、起算点は民法724条に従うべきである。
結論
船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効は、被害者が損害及び加害者を知った時から進行する。
実務上の射程
商法(海商法)上の短期消滅時効の規定において、条文上「~から」という起算点の明文がない場合、民法の消滅時効の一般原則(主観的起算点)が適用されることを示した。船舶衝突事故等の海難事故において、被害者が即座に加害者を特定できない実態を考慮した判断であり、海商法の解釈において民法の基本原則が修正されない範囲を画定する際に活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)931 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、被害者が権利の範囲確認等の行政審判を受ける前であっても、損害及び加害者を知った時から進行する。実用新案権等の知的財産権侵害を理由とする場合であっても、権利関係の公的確認を待たずに時効の起算点を認定できる。 第1 事案の概要:上告人(実用新案権者)は、被上…