交通事故により負傷した者が,後遺障害について症状固定の診断を受け,これに基づき自動車保険料率算定会に対して自動車損害賠償責任保険の後遺障害等級の事前認定を申請したときは,その結果が非該当であり,その後の異議申立てによって等級認定がされたという事情があったとしても,上記後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効は,遅くとも上記症状固定の診断を受けた時から進行する。
交通事故による後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効が遅くとも症状固定の診断を受けた時から進行するとされた事例
民法724条
判旨
不法行為による後遺障害の損害賠償請求権の消滅時効(旧民法724条)の起算点に関し、被害者が「損害を知った時」とは、症状固定の診断を受けた時を指し、自算会による後遺障害等級認定の時期には左右されない。
問題の所在(論点)
後遺障害による損害賠償請求権の消滅時効の起算点(「損害を知った時」)について、自算会による後遺障害等級認定がなされた時まで遅らせることができるか。症状固定時を基準とすべきかが問題となる。
規範
旧民法724条前段の「損害及び加害者を知った時」とは、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知った時をいい、具体的には「損害の発生を現実に認識した時」を指すと解すべきである。
重要事実
被害者(被上告人)は、交通事故により後遺障害を負い、平成9年5月22日に「症状固定」の診断を受けた。その後、自算会に対し後遺障害等級認定を申請したが、当初は「非該当」とされた。異議申立てを経て平成11年以降に「12級12号」の認定を受けたため、平成13年5月2日に提訴したところ、加害者側から3年の消滅時効を援用された。
あてはめ
被害者は平成9年5月22日の症状固定診断に基づき、自ら後遺障害等級の事前認定を申請している。この時点で後遺障害の存在を現実に認識し、賠償請求が事実上可能な程度に損害を知ったといえる。自算会の等級認定は保険金額算定のための損害査定にすぎず、被害者の権利行使を制約するものではないため、当初の認定が「非該当」であったことや、後の異議申立てで認定された事由は、時効の進行を左右しない。
結論
本件損害賠償請求権の消滅時効は、遅くとも症状固定診断時(平成9年5月22日)から進行し、本件訴訟提起時には3年の時効期間が経過しているため、時効により消滅する。
実務上の射程
交通事故の後遺障害案件において、時効起算点を「症状固定時」に確定させる強力な規範である。等級認定が遅れたり、納得のいく認定が出るまで時間がかかったりしても、時効期間は猶予されないため、実務上は時効完成前に訴訟提起や時効更新措置をとるべき指針となる。なお、現行民法724条1号下でも「主観的起算点」の判断として同様の射程を有する。
事件番号: 平成16(受)1434 / 裁判年月日: 平成17年11月21日 / 結論: 棄却
船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効は,民法724条により,被害者が損害及び加害者を知った時から進行する