契約に基づく債務の履行不能による損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求し得る時から進行する。
契約に基づく債務の履行不能による損害賠償請求権の消滅時効の起算点
民法166条1項,民法415条
判旨
債務の履行不能による損害賠償請求権の消滅時効は、本来の履行請求権との法的同一性に基づき、本来の債務の履行を請求し得る時から進行する。したがって、本来の債務の消滅時効の援用は、特段の事情がない限り、これに代わる損害賠償請求権の消滅時効をも援用する趣旨と解される。
問題の所在(論点)
履行不能による損害賠償請求権の消滅時効の起算点は「履行不能時」か「本来の債務の履行請求が可能となった時」か。また、本来の債務の時効援用は、損害賠償請求権にも及ぶか。
規範
契約に基づく債務不履行による損害賠償請求権は、本来の履行請求権の拡張ないし内容の変更であり、本来の履行請求権と法的に同一性を有する。したがって、債務者の責めに帰すべき事由により生じた履行不能による損害賠償請求権の消滅時効は、履行不能時ではなく、本来の債務の履行を請求し得る時からその進行を開始する。
重要事実
被上告人(買主)は、昭和39年に農地である本件土地を買い受け、代金全額を支払って条件付所有権移転仮登記を経由した。売主の相続人である上告人は、昭和63年に本来の債務(所有権移転許可申請協力請求権)の消滅時効を援用して仮登記を抹消し、第三者に売却して移転登記を経由した。被上告人は履行不能に基づく損害賠償を請求したが、上告人は平成5年にも改めて消滅時効を援用した。
あてはめ
本件土地の売却により上告人の移転義務は履行不能となったが、これによって生じた損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務である許可申請義務を請求し得た本件契約締結時(昭和39年)から進行する。また、上告人が行った本来の債務についての時効援用は、法的同一性ゆえに損害賠償請求権の消滅時効を援用する趣旨と解し得る。したがって、昭和39年から10年以上が経過している本件では、格別の事情がない限り、時効援用により本権は消滅する。
結論
履行不能による損害賠償請求権の消滅時効は本来の債務の履行を請求し得る時から進行するため、上告人による時効援用が認められれば、被上告人の請求は排斥される。原審は時効の成否を再審理すべきである。
実務上の射程
消滅時効の起算点に関する重要判例。履行不能時に初めて損害賠償請求権が発生すると考えて「履行不能時」を起算点とする誤りを防ぐために用いる。また、本来の債務の時効援用が損害賠償債務に及ぶ点も、実務上、主張の趣旨を合理的に解釈する根拠として有用である。
事件番号: 昭和37(オ)949 / 裁判年月日: 昭和38年11月1日 / 結論: 棄却
不動産所有者が朝鮮から内地に帰還して不動産管理人に対し当該不動産の返還を請求したときに右管理人がその不動産の収益を計算して所有者に支払うとの約定のあつた場合には、右不動産収益返還請求権の消滅時効は、前示返還請求のなされた時から進行する。
事件番号: 平成17(行ヒ)341 / 裁判年月日: 平成19年4月24日 / 結論: 棄却
1 財産の管理を怠る事実に係る実体法上の請求権が除斥期間の経過により消滅するなどして怠る事実が終わった場合には,当該怠る事実の終わった日から1年を経過したときはこれを対象とする住民監査請求をすることができない。 2 財産の管理を怠る事実(第1の怠る事実)に係る実体法上の請求権が除斥期間の経過により消滅するなどして怠る事…