瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用がある
瑕疵担保による損害賠償請求権と消滅時効
民法167条1項,民法566条3項,民法570条
判旨
売主の瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権には消滅時効の規定が適用され、その消滅時効は買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行する。
問題の所在(論点)
売主の瑕疵担保責任(旧民法570条、566条)に基づく損害賠償請求権に消滅時効の規定が適用されるか。また、適用される場合の消滅時効の起算点はいつか。
規範
1. 売主の瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権は、売買契約に基づき法律上生ずる金銭支払請求権であり、民法167条1項(現166条1項2号)にいう「債権」に当たる。2. 除斥期間の定め(旧566条3項)は法律関係の早期安定のための特別の限定であり、時効規定の適用を排除しない。3. 引渡し後であれば、消滅時効期間内に瑕疵を発見・行使することが期待可能であり、時効を認めないことは売主に過大な負担を課し不当であるため、引渡し時を起算点として消滅時効が進行する。
重要事実
買主(被上告人)は、昭和48年に売主(上告人)から宅地を買い受け、同年に引渡し及び登記を受けた。しかし、当該宅地には道路位置指定がされており、建物の改築に支障が生じる瑕疵があった。買主がこの事実を知り、損害賠償を請求したのは平成6年であり、引渡しから約21年が経過していた。売主は消滅時効を援用した。
あてはめ
本件損害賠償請求権は民法167条1項の「債権」に該当する。買主は昭和48年に本件宅地の引渡しを受けており、通常であれば消滅時効期間(10年)の満了までに瑕疵を発見して権利行使することが期待できる。これに対し、本件請求が行われたのは引渡しから21年余りを経過した後である。したがって、消滅時効の規定を適用し、引渡し時を起算点とすると、本件請求権は時効により消滅しているといえる。
結論
瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定が適用され、引渡しを受けた時から進行するため、本件請求権は特段の事情がない限り消滅時効にかかる。
実務上の射程
改正前民法下の判例であるが、現行法においても瑕疵担保責任(契約不適合責任)に基づく損害賠償請求権が「債権」であり、一般的な消滅時効(166条1項)にかかる点は維持されている。引渡し時を「客観的起算点」とする判断枠組みは、長期の権利存続を制限する実務上の指針となる。答案上は、除斥期間(期間制限)と消滅時効が併存することを明記した上で、引渡し時からの期間経過を検討する際に用いる。
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1 民法564条にいう「事実ヲ知リタル時」とは,買主が売主に対し同法563条又は565条に規定する担保責任を追及し得る程度に確実な事実関係を認識した時をいう。 2 土地の買主と隣接地所有者との間で買い受けた土地の一部の所有権の帰属が争われた裁判手続において,隣接地所有者が係争地は同人の所有に属することを明確に主張したと…
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