1 民法564条にいう「事実ヲ知リタル時」とは,買主が売主に対し同法563条又は565条に規定する担保責任を追及し得る程度に確実な事実関係を認識した時をいう。 2 土地の買主と隣接地所有者との間で買い受けた土地の一部の所有権の帰属が争われた裁判手続において,隣接地所有者が係争地は同人の所有に属することを明確に主張したとしても,買主がその主張を知った時点をもって民法564条所定の「事実ヲ知リタル時」ということはできない。
1 民法564条にいう「事実ヲ知リタル時」の意義 2 土地の買主が当該土地の一部の所有権の帰属をめぐる裁判手続においてこれが隣接地に属する旨の隣接地所有者の主張を知った時点をもって民法564条所定の「事実ヲ知リタル時」ということはできないとされた事例
民法564条
判旨
売買の目的物の一部が他人に属する場合等の担保責任の除斥期間について、買主が「知った時」とは、売主に対し担保責任を追及し得る程度に確実な事実関係を認識した時を指す。隣接所有者との間で所有権の帰属に紛争が生じている場合、単に相手方が所有権を主張しただけでは足りず、公権的判断等を待つのが通常であり、直ちに権利行使が可能となる程度の認識があったとはいえない。
問題の所在(論点)
旧民法563条・565条(数量指示売買・一部他人物売買)に基づく代金減額請求権の除斥期間(旧564条)の起算点である「知った時」の意義、および境界紛争中における認識の程度。
規範
旧民法564条(現566条等参照)所定の除斥期間の起算点である「事実を知った時」とは、買主が売主に対し担保責任を追及し得る程度に確実な事実関係を認識した時をいう。具体的には、権利の一部が他人に属すること、および売主がこれを取得して買主に移転できないことについて、単なる疑義を超えた確実な認識が必要である。
重要事実
買主(上告人)は売主(被上告人)から土地を買い受けたが、後に隣接地の所有者Dが、境界線の争いから当該土地の一部(本件土地)が自己の所有であると主張し、ブロック塀を建築した。上告人はDに対し、占有移転禁止の仮処分やブロック塀撤去等の訴訟を提起して争ったが、敗訴が確定した。上告人が、Dから本件土地が自己の所有である旨の答弁書を受け取った時から1年を超えて売主に代金減額請求をしたため、除斥期間の成否が争われた。
あてはめ
土地の所有権帰属に関し、隣接地の所有者との間で裁判手続において争いが生じている場合、隣接所有者が自己の所有権を明確に主張したとしても、買主としてはその主張の当否について公権的判断(判決等)を待って対処するのが通常である。本件においても、Dから答弁書が提出された段階では、上告人が「担保責任を追及し得る程度に確実な事実関係を認識した」とはいえず、除斥期間は進行しないと解される。
結論
除斥期間の起算点を答弁書提出時とした原審の判断は法令の解釈を誤っており、買主の代金減額請求を認める余地があるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
境界紛争などの法的安定性が欠ける事態において、買主に対し早期の権利行使を強いるのは酷であるという趣旨を含む。答案上は、除斥期間の起算点を「主観的認識」の観点から限定解釈する際の規範として活用できる。なお、現行民法下(566条)の「通知」の期間制限の解釈においても、同様の趣旨が妥当し得る。
事件番号: 昭和63(オ)1543 / 裁判年月日: 平成4年10月20日 / 結論: 破棄差戻
一 民法五六六条三項にいう一年の期間は、除斥期間である。 二 瑕疵担保による損害賠償請求権を保存するには、右請求権の除斥期間内に、売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることをもつて足り、裁判上の権利行使をするまでの必要はない。
事件番号: 平成21(受)17 / 裁判年月日: 平成22年6月1日 / 結論: 破棄自判
売買契約の目的物である土地の土壌に,上記売買契約締結後に法令に基づく規制の対象となったふっ素が基準値を超えて含まれていたことは,(1)上記売買契約締結当時の取引観念上,ふっ素が土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されておらず,(2)上記売買契約の当事者間において,上記土地が備えるべ…