一 民法五六六条三項にいう一年の期間は、除斥期間である。 二 瑕疵担保による損害賠償請求権を保存するには、右請求権の除斥期間内に、売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることをもつて足り、裁判上の権利行使をするまでの必要はない。
一 民法五六六条三項にいう一年の期間の性質 二 瑕疵担保による損害賠償請求権の除斥期間と裁判上の権利行使の要否
民法566条3項,民法570条
判旨
商人間の売買において買主が損害賠償請求権を保存するには、商法526条の通知義務とは別に、瑕疵発見から1年以内に売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げる必要がある。
問題の所在(論点)
商人間の売買において、商法526条所定の通知義務を履行した場合であっても、民法上の瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権に期間制限(除斥期間)が適用されるか。また、その権利保存にはどのような行為が必要か。
規範
商法526条は権利行使の前提要件を規定したにすぎず、権利の消長は民法(旧570条、566条3項)の一般原則に従う。同条の期間制限は除斥期間であり、権利保存のためには、裁判上の行使までは不要だが、瑕疵の内容と損害額の算定根拠等を示し、売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることを要する。
重要事実
商人間のパンティストッキング売買において、買主(被上告人)は昭和54年末から55年初めに瑕疵を発見し、直ちに売主(上告人)へ通知した。しかし、損害賠償を求める本訴を提起したのは、瑕疵発見から3年以上経過した昭和58年12月であった。
あてはめ
被上告人は瑕疵発見から1年を経過した後に提訴している。権利を保存したといえるためには、除斥期間内に具体的に瑕疵の内容と損害賠償請求をする旨を表明し、算定根拠を示すなどして売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要があるが、原審は通知事実のみをもって請求を認容し、除斥期間の経過による消滅の有無を判断していない。
結論
商法526条の要件を満たしても、民法の除斥期間制限は排除されない。瑕疵発見から1年以内に担保責任を問う明確な意思表示(権利行使)がなされたか否かにつき審理を尽くさせるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
商人間の売買(商法526条)においても民法の期間制限が重畳的に適用されることを示す。実務上、商法上の通知(不備の指摘)と、民法上の権利行使(賠償請求の意思表示)を峻別し、後者が除斥期間内になされたかを厳格に判断する際の指標となる。
事件番号: 昭和46(オ)533 / 裁判年月日: 昭和47年1月25日 / 結論: 棄却
商人間の不特定物を目的とする売買において、瑕疵のある物が給付された場合においても、商法五二六条一項の適用の結果、買主において契約を解除しえず、また損害の賠償をも請求しえなくなつたのちにおいては、買主は売主に対し、もはや完全な給付を請求することはできないものと解すべきである。