商人間の不特定物を目的とする売買において、瑕疵のある物が給付された場合においても、商法五二六条一項の適用の結果、買主において契約を解除しえず、また損害の賠償をも請求しえなくなつたのちにおいては、買主は売主に対し、もはや完全な給付を請求することはできないものと解すべきである。
商人間の不特定物を目的とする売買における不完全履行と代物請求権
民法415条,民法570条,商法526条
判旨
商人間の売買において、買主が商法526条所定の期間内に瑕疵の通知を怠った場合、解除や損害賠償のみならず、完全な給付を請求することもできず、これを理由に代金の支払を拒むことはできない。
問題の所在(論点)
商人間の売買において、買主が商法526条1項の通知義務を怠った場合、瑕疵の存在を理由に追完(完全な給付)を求め、代金支払義務の履行を拒むことができるか。
規範
商人間の売買において、買主が目的物を受領した後、検査・通知義務(商法526条1項)を怠り、契約の解除や損害賠償の請求権を失った場合には、仮に追完(完全な給付)が可能であったとしても、もはや完全な給付を請求することはできない。したがって、買主は、瑕疵の存在を理由に代金支払義務の履行を拒むことはできない。
重要事実
暖房機器製造販売業者である被上告人と、種苗卸業者である上告人との間で、暖房機ライトバーナーの売買契約が締結された。上告人は、給付された製品に設計製作上の欠陥(不適格性)があると主張したが、受領後1年余りの間、被上告人に対し完全な給付を求めた事実はなく、解除や損害賠償の通知も行わなかった。被上告人が上告人に対し、売買代金の支払を求めて提訴した事案である。
あてはめ
まず、本件は暖房機器業者と種苗卸業者の取引であり、商行為(商法521条以下)に該当する。上告人は本件バーナーに瑕疵があると主張するが、受領後1年余りの間、検査・通知義務を尽くした形跡がない。商法526条1項の趣旨は、商人間の取引における瑕疵を巡る法律関係を早期に確定させることにある。この趣旨に照らせば、同条により解除権や損害賠償請求権を失った後は、もはや完全な給付の請求も認められない。上告人は、瑕疵を理由とする代金支払拒絶の抗弁の前提となる権利を喪失しているといえる。
結論
上告人は代金支払を拒むことができない。よって、上告人に対し代金支払を命じた原判決は相当である。
実務上の射程
商人間の売買における検査・通知義務の懈怠が、瑕疵担保責任(契約不適合責任)に基づく諸請求のみならず、履行の不完全を理由とする追完請求や同時履行の抗弁をも封じ込めることを示した点に射程がある。実務上は、代金支払請求に対する抗弁として不完全履行を主張する際、商法526条の期間制限の遵守が不可欠な要件となる。
事件番号: 昭和25(オ)258 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が商法526条に基づく代金減額等の法的効果を意図したとしても、その主張を明確にし適切な立証をなすのは当事者自身の責務であり、これを行わない場合に裁判所が釈明権を行使しなかったとしても違法とはいえない。 第1 事案の概要:売掛代金請求事件において、被告(上告人)は品物が粗悪である旨の陳述をした…