仕事の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の修補が可能なときであつても、修補を請求することなく直ちに修補に代る損害賠償を請求することができる。
瑕疵の修補が可能な場合に修補を請求することなく直ちに修補に代る損害賠償請求をすることの可否
民法634条
判旨
請負契約の目的物に瑕疵がある場合、注文者は瑕疵の修補が可能であっても、修補請求を先行させることなく、直ちに修補に代わる損害賠償を請求することができる。
問題の所在(論点)
請負契約において、仕事の目的物に瑕疵がある場合に、注文者は瑕疵の修補を請求することなく直ちに修補に代わる損害賠償(旧民法634条2項前段、現民法559条・564条・415条1項)を請求できるか。
規範
仕事の目的物に瑕疵がある場合、注文者は、瑕疵の修補が可能であるときであっても、民法634条1項(改正前)に基づく瑕疵の修補を請求することなく、直ちに同条2項(改正前)に基づく修補に代わる損害賠償を請求することができる。注文者は、修補請求と損害賠償請求のいずれを選択するかについて、自由な選択権を有する。
重要事実
請負契約の注文者である上告人が、仕事の目的物に瑕疵があるとして、請負人に対し損害賠償を請求した。これに対し、瑕疵の修補が可能である場合には、まず修補請求をすべきであり、直ちに修補に代わる損害賠償を請求することはできないのではないかが争点となった(具体的な契約内容や瑕疵の詳細、原審の事実に係る記述は判決文からは不明)。
あてはめ
本件において、目的物に瑕疵が存在することは原審により認定されている。民法(改正前634条)は、修補請求権と損害賠償請求権を並列的に規定しており、両者の行使順序を制約する文言はない。したがって、瑕疵の修補が可能であるという事実は、損害賠償請求権の行使を妨げる理由にはならず、注文者が修補請求を選択せずに金銭賠償を求めたことは正当であると解される。
結論
注文者は、瑕疵の修補が可能であっても、修補を請求することなく直ちに損害賠償を請求することができる。
実務上の射程
請負人の担保責任に関する基本判例であり、現行法下(改正後の債務不履行責任体系)においても、追完請求(562条)と損害賠償請求(564条・415条)の選択関係として同様に解される。答案上は、注文者が追完を待たずに金銭解決を図る際の法的根拠として本判例の論理を使用する。
事件番号: 昭和53(オ)924 / 裁判年月日: 昭和54年2月2日 / 結論: 棄却
請負契約における仕事の目的物の瑕疵につき、注文者が請負人に対し、あらかじめ修補の請求をすることなく直ちに修補に代わる損害賠償の請求をした場合には、右請求の時を基準として賠償額を算定すべきである。
事件番号: 昭和52(オ)1306 / 裁判年月日: 昭和53年9月21日 / 結論: 棄却
請負人の注文者に対する報酬債権と注文者の請負人に対する目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権とは、右両債権額が異なる場合であつても相殺することが許される。