請負契約における仕事の目的物の瑕疵につき、注文者が請負人に対し、あらかじめ修補の請求をすることなく直ちに修補に代わる損害賠償の請求をした場合には、右請求の時を基準として賠償額を算定すべきである。
請負契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求と賠償額算定の基準時
民法634条
判旨
請負契約の目的物に瑕疵がある場合、注文者が修補請求をせず直ちに修補に代わる損害賠償を請求したときは、その請求時を基準として損害賠償額を算定すべきである。請求後に物価高騰等で修補費用が増加しても、増加後の費用を損害として請求することはできない。
問題の所在(論点)
請負契約の目的物の瑕疵につき、注文者が瑕疵修補に代わる損害賠償を請求した場合において、損害賠償額算定の基準となる時期はいつか。特に、請求後の物価高騰等による費用の増加分を損害として認めることができるかが問題となる。
規範
請負契約における瑕疵修補に代わる損害賠償額(民法634条2項前段、現559条・564条・415条1項)の算定時期は、原則として注文者が修補請求をすることなく直ちに損害賠償の請求をした時点を基準とする。債権者が損害の填補を求めた時点で損害の内容は確定し、その後の物価変動等のリスクは債権者が負うべきである。
重要事実
上告人(注文者)は、請負契約の目的物に瑕疵があったため、請負人に対し、あらかじめ瑕疵の修補を請求することなく、直ちに瑕疵修補に代わる損害賠償を請求した。しかし、請求から判決に至るまでの間に年月が経過し、物価の高騰等によって、実際の修補に要する費用が請求時の費用を上回る結果となった。上告人は、この増加した費用相当額の賠償を求めて争った。
事件番号: 昭和59(オ)543 / 裁判年月日: 昭和60年5月17日 / 結論: その他
請負契約が請負人の責に帰すべき事由により中途で終了した場合において、残工事の施工に要した費用として、注文者が請負人に賠償を請求することができるのは、右費用のうち、未施工部分に相当する請負代金額を超える部分に限られる。
あてはめ
本件において注文者は、瑕疵の修補を先行させることなく直ちに損害賠償請求を行っている。この請求の意思表示がなされた時点で、修補に代わる金銭賠償という形で損害の内容が具体化・固定されたといえる。その後の年月経過に伴う物価高騰は、既に確定した損害額を左右する要素とは解されないため、請求時を基準として算定された金額を超える増加分については、賠償の範囲に含まれないと評価される。
結論
損害賠償額は請求時を基準として算定すべきであり、その後の物価高騰等による増加後の費用相当額の請求は許されない。
実務上の射程
本判例は、目的物の瑕疵に基づく損害賠償請求(現行法下の債務不履行責任)における算定基準時を明示したものである。実務上は「請求時」が基準となるため、訴訟中に修補費用が変動しても原則として算定額は維持される。答案上は、履行代償的性質を持つ損害賠償において、債権者が履行に代わる金銭を求めた時点で損害が固定されるという論理で使用する。
事件番号: 昭和53(オ)826 / 裁判年月日: 昭和54年3月20日 / 結論: 棄却
仕事の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の修補が可能なときであつても、修補を請求することなく直ちに修補に代る損害賠償を請求することができる。
事件番号: 昭和54(オ)158 / 裁判年月日: 昭和58年1月20日 / 結論: 棄却
造船の請負契約によつて建造された船舶に存する瑕疵が比較的軽微であるが、その修補に著しく過分の費用を要するなど原判示の事実関係のもとにおいては、注文者は、請負人に対し、右修補に代えて、右修補に要する改造工事費及び滞船料に相当する金員を損害賠償として請求することはできない。
事件番号: 平成22(受)2324 / 裁判年月日: 平成23年12月16日 / 結論: 破棄差戻
1 注文者と請負人が建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約を締結した場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記請負契約は,公序良俗に反し,無効である。 (1) 上記請負契約は,建築基準法所定の確認及び検査を潜脱するため,法令の規定に適合した建物の建築確認申請用図面のほかに,…