一、控訴審最終口頭弁論期日に附帯控訴状が未だ提出送達されていなかつたとしても、附帯訴代理人がこれに基き附帯控訴の趣旨を陳述したのに対し、附帯控訴人の代理人において何ら異議を止めることなく、附帯控訴棄却の判決を求める旨申立て、そのまま弁論終結に至つたときは、民訴第141条により、附帯控訴人は右附帯控訴状の提出送達がなかつたことを上告の理由とし得ないものと解すべきである。 二、請負契約における仕事の目的物の瑕疵につき、請負人に修補を請求したがこれに応じないので、修補に代る損害の賠償を請求する場合においては、右修補請求の時を基準として損害の額を算定するのが相当である。
一、附帯控訴状の提出及び送達に関し、責問権の喪失が認められた事例。 二、請負契約の目的物の瑕疵修補に代る損害賠償請求と損害額算定の基準時
民法634条
判旨
請負契約の目的物に瑕疵がある場合、注文者が修補請求をしても請負人がこれに応じないため修補に代わる損害賠償を請求するときは、修補請求時を基準として損害額を算定すべきである。
問題の所在(論点)
請負人が瑕疵修補義務を履行しない場合に、注文者が請求する「修補に代わる損害賠償」の額を算定すべき基準時期はいつか。
規範
請負人が仕事の目的物の瑕疵の修補請求に応じないため、注文者が修補に代わる損害賠償(民法634条2項前段、現559条・562条・415条)を請求する場合、損害額の算定は修補請求の時を基準として行うべきである。
重要事実
注文者である上告人は、請負契約の目的物に瑕疵があったため、請負人に対し瑕疵の修補を請求した。しかし、請負人がこれに応じなかったため、上告人は修補に代わる損害賠償を請求した。原審は、修補請求時を基準として損害額を算定したが、上告人はこの算定基準時期の適否について争い、上告した。
あてはめ
本件では、注文者がまず修補請求を行っている。請負人がこの請求に応じない以上、注文者は修補に要する費用相当額の損害を被ったといえる。この場合、損害賠償制度の目的である損害の公平な分担の観点から、請負人が修補の履行を求められ、その義務を尽くすべきであった時点、すなわち修補請求時を基準として損害額を固定するのが合理的である。
結論
修補請求時を基準として損害額を算定した原審の判断は妥当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、改正前民法下の瑕疵担保責任に基づく判断であるが、現行法の債務不履行に基づく損害賠償(415条)における「履行に代わる損害賠償(転補賠償)」の算定時期を考える上でも重要な指針となる。原則として、履行(修補)を請求し、それが拒絶された時点を基準とすべきことを示している。
事件番号: 昭和53(オ)924 / 裁判年月日: 昭和54年2月2日 / 結論: 棄却
請負契約における仕事の目的物の瑕疵につき、注文者が請負人に対し、あらかじめ修補の請求をすることなく直ちに修補に代わる損害賠償の請求をした場合には、右請求の時を基準として賠償額を算定すべきである。