1 財産の管理を怠る事実に係る実体法上の請求権が除斥期間の経過により消滅するなどして怠る事実が終わった場合には,当該怠る事実の終わった日から1年を経過したときはこれを対象とする住民監査請求をすることができない。 2 財産の管理を怠る事実(第1の怠る事実)に係る実体法上の請求権が除斥期間の経過により消滅するなどして怠る事実が終わった場合において,上記請求権の行使を怠り,同請求権を除斥期間の経過により消滅させるなどしたことが違法であるとし,第1の怠る事実が違法であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実(第2の怠る事実)とした上で,第2の怠る事実を対象とする住民監査請求がされたときは,当該監査請求は,第1の怠る事実の終わった日を基準として1年の監査請求期間の制限に服する。
1 財産の管理を怠る事実が終わった場合における当該怠る事実を対象とする住民監査請求と監査請求期間の制限 2 財産の管理を怠る事実が終わった場合において当該怠る事実が違法であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としこれを対象としてされた住民監査請求と監査請求期間の制限
(1,2につき)地方自治法242条2項
判旨
住民監査請求期間の制限(地方自治法242条2項)は、財産の管理を怠る事実が終わった日から1年を経過したときにも適用される。本来の請求権消滅により生じた損害賠償請求権の不行使を対象とする場合でも、期間制限は元の「怠る事実」が終了した時点から起算される。
問題の所在(論点)
「財産の管理を怠る事実」が実体法上の請求権消滅等により終了した場合に、地方自治法242条2項の1年の監査請求期間制限が適用されるか。また、その終了により発生した損害賠償請求権の不行使を新たな「怠る事実」として構成した場合の起算点はいつか。
規範
地方自治法242条2項の趣旨は、財務会計上の行為をいつまでも監査請求の対象とすることを制限し、法的安定性を図る点にある。この趣旨に照らせば、財産の管理を怠る事実に係る請求権が除斥期間経過等により消滅し「怠る事実」が終わった場合には、その終了時から1年を経過したときは監査請求をなし得ない。また、当該「怠る事実」(第1の怠る事実)の結果として発生した損害賠償請求権の不行使(第2の怠る事実)を対象とする場合も、第1の怠る事実が終了した日を基準として1年の期間制限に服する。
重要事実
町(現香川市の一部)の住民である上告人らは、前町長Aが道路改良工事請負人Bに対する瑕疵修補に代わる損害賠償請求権の行使を怠り、除斥期間経過により同権利を消滅させて町に損害を与えたと主張した。上告人らは、町長がAに対しこの損害賠償の請求をしないことは「財産の管理を怠る事実」にあたるとして住民訴訟を提起したが、監査請求が行われたのは、Bに対する請求権が消滅したとされる日から1年を経過した後であった。
あてはめ
本件における監査請求の対象は、AがBへの請求権行使を怠り除斥期間により消滅させたことが違法であるとして、それにより発生したAに対する損害賠償請求権を町長が行使しないこと(第2の怠る事実)である。しかし、これを無制限に認めれば、第1の怠る事実(Bへの請求権行使の懈怠)の終了から1年を経過していても実質的にその当否を監査できることになり、期間制限の趣旨を没却する。したがって、Bに対する請求権が除斥期間で消滅した時点を「怠る事実が終わった日」とし、そこから1年を経過した本件監査請求は不適法である。
結論
本件訴えは、適法な監査請求の前置を欠く不適法なものとして却下されるべきである。
実務上の射程
「財産の管理を怠る事実」が解消された後の責任追及について、期間制限を回避する目的で新たな「怠る事実」を構成する手法を封じる判例である。住民訴訟における訴えの適法性を検討する際、特に請求権の時効や除斥期間が経過している事案において、監査請求期間の起算点を特定するための重要な基準となる。
事件番号: 平成6(行ツ)206 / 裁判年月日: 平成9年1月28日 / 結論: 破棄差戻
一 財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする住民監査請求において、右請求権が右財務会計上の行為のされた時点ではいまだ発生しておらず、又はこれを行使することができない場合には、右実体法上の請求権が発生し、これを行使することができることになった日を基…
事件番号: 平成10(行ヒ)51 / 裁判年月日: 平成14年7月2日 / 結論: 破棄自判
1 実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象としてされた住民監査請求において,監査委員が当該怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,当該監査請求に地方自治法2…
事件番号: 平成12(行ヒ)76 / 裁判年月日: 平成14年7月18日 / 結論: 棄却
日本下水道事業団が市から建設の委託を受けた施設の設備工事を業者に発注した場合において,業者らが談合した結果,同事業団と業者との間で不当に高額の代金で工事請負契約が締結され,委託者として最終的にその工事請負代金を負担する市に損害を与えたことが,上記業者らの市に対する不法行為に当たり,市は上記業者らに対し損害賠償請求権を有…