再売買の予約完結権の消滅時効は、権利の行使につき特に始期を定め、または停止条件を附したものでない限りは、予約完結権の成立した時から進行する。
消滅時効の起算点。
民法166条
判旨
再売買の一方の予約における予約完結権の消滅時効は、特段の始期や停止条件の合意がない限り、権利成立時から進行する。債務弁済による所有権復帰を目的とする再売買予約であっても、当然に弁済期まで時効が進行しないわけではない。
問題の所在(論点)
債務の担保として活用される再売買の一方の予約において、予約完結権の消滅時効の起算点(「権利を行使することができる時」)をいつと解すべきか。特に、被担保債務の弁済期との関係が問題となる。
規範
消滅時効は、権利を行使し得るときから進行する(民法166条1項)。予約完結権について、その行使につき特に始期を定め、または停止条件を付したものでない限り、当該権利は成立の時から行使し得るものであり、消滅時効もその時から進行すると解するのが相当である。
重要事実
本件は、債務が弁済された場合に売渡担保物の所有権を債権者から債務者に復帰させる手段として、再売買の一方の予約の形式がとられた事案である。原審は、本件予約が債務弁済による所有権復帰を目的とするものである以上、弁済期が到来するまでは予約完結権を行使し得ず、弁済期が延長されれば予約完結権の行使期間も延長される(債務の履行期限と予約完結権の行使期間を一致させる合意があった)として、時効の完成を否定した。
事件番号: 昭和38(オ)1108 / 裁判年月日: 昭和40年4月6日 / 結論: 棄却
土地を目的とする代物弁済予約に基づく完結権を行使しうる時から約一五年後に完結の意思表示がなされた場合でも、右予約による所有権移転請求権保全の仮登記が経由されているときは、他に特段の事情のないかぎり、いわゆる権利失効の原則により権利が失われることなく、右完結権の行使は有効である。
あてはめ
本件の予約完結権について、当事者間で「弁済期までは行使できない」といった行使の始期を定める合意や、停止条件を付した事実が認められないのであれば、原則通り権利成立時から行使可能である。原審は、債務弁済による所有権復帰という目的から直ちに弁済期と予約完結権の行使期間が一致すると解したが、これは当事者の特約の有無を十分に検討せず、権利成立時を起算点とする原則を無視したものであり、失当といえる。
結論
予約完結権は成立時から行使し得るため、特約がない限りその時から消滅時効が進行する。原判決を破棄し、時効中断の主張等の有無を審理させるため、本件を差し戻す。
実務上の射程
予約完結権が形成権であり、原則として成立時から行使可能であることを示した。担保目的の予約であっても、弁済期を権利行使の始期とする黙示の合意を当然に認めるわけではないため、時効の成否を検討する際には「権利行使を妨げる法的障害(特約等)」の有無を厳格に認定する必要がある。答案上は、166条1項の「権利を行使することができる時」の具体化として本判例の規範を引用する。
事件番号: 昭和39(オ)919 / 裁判年月日: 昭和40年3月11日 / 結論: 棄却
不動産を目的とする代物弁済の予約完結の意思表示がなされたときは、これにより、該不動産の所有権移転の効果が生ずるものと解すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)1481 / 裁判年月日: 昭和41年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債権担保のため抵当権設定と共に代物弁済予約がなされた場合、元本の一部弁済があっても残債務がある限り予約は失効せず、完結権の行使は有効である。また、予約に基づく仮登記がある場合でも、債権者は仮登記の本登記手続によらず、直接代物弁済を原因とする所有権移転登記を請求できる。 第1 事案の概要:被上告人は…
事件番号: 昭和40(オ)353 / 裁判年月日: 昭和44年12月18日 / 結論: 破棄差戻
不動産を買い受け所有権に基づいてこれを占有する買主は、売主との関係においても、自己の占有を理由として右不動産につき時効による所有権の取得を主張することができる。
事件番号: 昭和43(オ)343 / 裁判年月日: 昭和48年1月26日 / 結論: その他
一、債権担保のため債務者所有の不動産につき代物弁済予約形式の契約を締結し、これを原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者は、債務者が弁済期に債務の弁済をしないため予約完結権を行使した場合であつても、目的不動産の換価処分または評価清算前に債務の弁済があつたときは、債務者に対し、右仮登記の抹消登記手続をしなけ…