賃借人の賃料支払義務違反を理由とする賃貸借契約解除の場合には催告を要しない旨の特約をしても、借家法第六条に牴触しない(昭和三七年四月五日第一小法廷判決、民集一六巻四号六七九頁参照)。
無催告解除の特約と借家法第六条。
借家法6条
判旨
賃料支払義務違反による無催告解除特約は、特段の事情のない限り有効であり、借家法(現借地借家法)の強行規定に抵触して無効となるものではない。
問題の所在(論点)
賃料支払義務違反を理由とする賃貸借契約の無催告解除特約は、賃借人に不利な特約を無効とする借地借家法の趣旨に照らし、有効か。
規範
賃料不払を理由とする無催告解除特約は、直ちに借地借家法の強行規定(旧借家法6条)に抵触して無効となるものではない。もっとも、賃貸借が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約であることに鑑み、当該特約は、催告なしに解除することが信義則に反すると認められる「特段の事情」がない場合に限り、有効と解すべきである。
重要事実
賃借人A1は賃方Dとの間で、家屋を遊技場として経営するための賃貸借契約を締結した。契約には「賃料(配当金)を2ヶ月以上支払わない場合は、廃業閉店して退去する」旨の条項が含まれており、原審はこれを無催告解除特約と認定した。A1らが2ヶ月分以上の賃料を支払わなかったため、賃貸人側が無催告で解除を主張したところ、A1らは当該特約が借家法に反し無効であると争った。
あてはめ
本件における2ヶ月以上の賃料不払を条件とする退去特約は、実質的に無催告解除特約と認められる。本件においては、催告を不要としても賃借人に酷とはいえない、あるいは信頼関係が既に破壊されているといった「特段の事情のない」状況にあると判断される。したがって、私法上の合意としての効力を否定する理由はない。
結論
本件無催告解除特約は有効であり、これに基づく契約解除は適法である。
実務上の射程
司法試験答案では、無催告解除特約の有効性を論じる際のリーディングケースとして用いる。規範として「特段の事情がない限り有効」という枠組みを示し、あてはめで不払期間や不払に至る経緯等の事実を拾い、「信頼関係が破壊されたといえるか(=特段の事情がないか)」を論じるのが一般的である。
事件番号: 昭和30(オ)830 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約において、賃料を1か月分でも不払いにしたときは無催告で解除できる旨の特約は、信義則に反し権利の濫用と認められる特段の事情がない限り有効である。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)と被上告人(賃貸人)との間には、調停条項により「賃料を1か月分でも支払うことを怠ったときは、被上告人において催…