信用取引による証拠金代用として差し入れられた株券の「預り証」に、預託された株券を特定するに足りる記載がなされず、その他原判示の事実関係のもとにおいては、反対の意思表示のないかぎり前記預託の対象たる特定株券の返還不能の場合には同種同数の株券(不特定物)をもつて返還する旨の合意が黙示でなされていると認定する余地があるから、この点に関する審理を尽さないで前記合意の存在を否定するのは違法である。
信用取引による証拠金代用として差し入れられた特定株券の返還能力の場合における特約の存否につき審理不尽の違法があるとされた事例。
証券取引法49条,証券取引法51条
判旨
株式売買の損失金担保として株券を預託する際、預り証に番号等の特定記載がなく、担保代用という目的がある場合には、反対の意思表示がない限り、同種同数の株券による返還を認める黙示の合意が認められる。
問題の所在(論点)
特定の株券の寄託において、その特定の個体ではない同種同数の株券による返還(不特定物としての返還)を認める黙示の合意が認められるか、その判断枠組みが問題となる。
規範
株券の寄託において、預り証等に株券を特定する情報(番号、枚数、名義人等)の記載がなく、かつ当該株券が取引の損失金担保(代用証券)として差し入れられたという性質を有する場合、特段の事情がない限り、寄託された特定の株券そのものの返還が不能なときは、同種同数の株券(不特定物)をもって返還する旨の黙示の合意が認められると解すべきである。
重要事実
上告人は、信用取引による株式売買の損失金担保のための証拠金代用として、新三菱重工業の株式4000株を寄託した。預り証(甲第6号証)には「新三菱重工業四〇〇〇株」を預かる旨のみが記載されており、株券番号、枚数、株主名義人といった個別の株券を特定するための情報は一切記載されていなかった。
あてはめ
本件では、預り証に株券を特定するに足りる情報の記載がない。また、本件株券が信用取引の担保(証拠金代用)として差し入れられたという事実関係に照らせば、当事者は当該株券の個性に着目していたとは言い難い。むしろ、担保価値としての数量に着目していたといえる。したがって、反対の意思表示がない限り、特定の株券が返還不能な場合には同種同数の株券を返還すれば足りるとする黙示の合意の存在を認定する余地が十分にある。
結論
同種同数の株券による返還合意の存否について審理を尽くさず、上告人の請求を排斥した原判決には違法があるため、破棄し差し戻す。
実務上の射程
代用証券として差し入れられた株券等の目的物について、特定物としての返還が困難な場合に、不特定物(種類物)としての返還義務の存否を判断する際の基準となる。特に、預り証等の書面の記載内容と、預託の目的(担保目的等)から黙示の合意を推認する手法は、実務上の事実認定において重要である。
事件番号: 昭和27(オ)40 / 裁判年月日: 昭和29年8月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当利得返還請求において、利得者の口座が犯罪行為のために単に利用されたに過ぎず、当該利得者に実質的な利益が残存しない場合には、利得の要件を欠くため返還義務を負わない。 第1 事案の概要:上告人は、柴山らによる犯罪行為(詳細は判決文からは不明)に関連して、被上告会社名義の預金口座に資金が流入したこと…