判旨
賃貸借契約の合意解除が認められない状況下で、転借人が賃貸人の承諾を得て賃借人(転貸人)に賃料を支払った場合、その支払は民法613条の趣旨に照らし、賃貸人に対する関係でも有効な支払として免責の効果が生じる。
問題の所在(論点)
賃貸借契約が存続している場合において、転借人が転貸人(賃借人)に対して賃料を支払ったことにより、賃貸人に対する関係でも賃料支払義務の免責が認められるか。また、それを理由に賃貸人による賃料延滞を理由とした解除を阻止できるか。
規範
民法613条の法意に照らせば、転借人が賃貸人に対する義務を負う一方で、適法な転貸借関係において転借人が転貸人(賃借人)に対して約定の賃料を支払ったときは、その支払の限度で賃貸人に対する支払義務を免れると解するのが相当である。
重要事実
賃貸人(上告人)と賃借人(訴外D)との間の賃貸借契約が存続している状況において、転借人(被上告人)はDに対して毎月1630円の約定賃料を支払っていた。賃貸人はDとの契約解除が有効であると主張して転借人に対し明渡し等を求めたが、原審においてDのなした解除の意思表示は無効と判断された。上告人は、被上告人がDに支払った賃料は上告人に対する支払としては無効であり、賃料延滞を理由とする契約解除が可能であると主張した。
あてはめ
本件では、賃貸人上告人と賃借人Dの間の賃貸借契約が依然として存続している。この状況下で、転借人被上告人がDに対し直接支払った約定賃料のうち、転貸借契約の範囲内(1023円)の限度については、民法613条の趣旨により、賃貸人に対する関係でも支払義務が免責される。したがって、被上告人には上告人に対する賃料の延滞は存在しないと評価される。
結論
被上告人には賃料の延滞がないため、上告人が被上告人に対して行った契約解除の意思表示はその効力を生じない。
事件番号: 昭和35(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借権の譲渡について賃貸人の承諾が得られない限り、民法612条に基づき、譲受人はその賃借権を賃貸人に対抗することができない。また、一時使用の賃貸借であることが確定された事案においては、借地法の適用を前提とする主張は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地の賃借権を譲り受けたと主張して賃…
実務上の射程
転借人の義務を定めた民法613条を、転借人の免責という側面から活用する際の根拠となる。答案上は、賃貸人が転借人に対して直接賃料請求を行う場面だけでなく、本件のように賃貸人が転借人の賃料不払を主張して排除を試みる場面での抗弁として構成する際に有用である。
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…
事件番号: 昭和36(オ)1325 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
土地賃貸借契約解除後賃借人およびその転借人に窮状の起ることをもつて、右解除権の行使を権利濫用ということはできない。
事件番号: 昭和36(オ)696 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
賃貸借の対象たる土地に対し、土地区画整理法に基づき換地予定地の指定がなされた結果、賃借人が従前の土地の使用収益を禁じられ、換地予定地の使用収益すべきことになつたとしても、これによつて従前の土地の賃貸借そのものが消滅に帰したわけではなく、その約定賃料もまた換地予定地の地積いかんにより当然増減するものではない。
事件番号: 昭和35(オ)1353 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
供託した旨の主張中に、提供したけれども受領を拒絶された旨の主張が包含されているとはかぎらず、後者の主張を前提とするかどうかを釈明させる義務は裁判所にない。