賃貸借の対象たる土地に対し、土地区画整理法に基づき換地予定地の指定がなされた結果、賃借人が従前の土地の使用収益を禁じられ、換地予定地の使用収益すべきことになつたとしても、これによつて従前の土地の賃貸借そのものが消滅に帰したわけではなく、その約定賃料もまた換地予定地の地積いかんにより当然増減するものではない。
土地区画整理法による換地予定地の指定と従前の土地の賃貸借の効力
民法601条,土地区画整理法99条,同施行法6条
判旨
土地区画整理に伴う換地予定地の指定があっても、従前の土地の賃貸借契約は消滅せず、賃借人は従前の土地の地積に基づいた約定賃料を全額支払う義務と利益を有する。
問題の所在(論点)
換地予定地の指定後において、賃借人はなお従前の土地の地積に基づく約定賃料を支払う義務と利益を有するか。また、賃貸人がその受領を拒んだ場合に受領遅滞の責を負うか。
規範
土地区画整理法に基づき換地予定地の指定がなされ、賃借人が従前の土地の使用収益を禁じられ換地予定地を使用すべきこととなった場合でも、従前の土地の賃貸借契約自体が消滅するものではない。また、その約定賃料は換地予定地の地積に応じて当然に増減するものではなく、別段の合意がない限り、従前の土地の地積による約定賃料の全額を弁済すべき義務および利益が存続する。
重要事実
賃貸人(上告人)と賃借人(被上告人)との間で土地の賃貸借契約が締結されていたところ、土地区画整理事業により換地予定地が指定された。賃貸人は、換地予定地の地積が従前の土地より減少したことなどを理由に、従前の地積に基づく約定賃料の受領を拒絶した。これに対し、賃借人は従前の約定賃料全額を弁済供託(提供省略による供託)した。賃貸人は、当該賃料の受領を拒絶できる正当な理由があること、および賃借人の行為が背信行為にあたること等を主張して争った。
事件番号: 昭和34(オ)316 / 裁判年月日: 昭和35年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】従前の土地について強制競売開始決定の登記がなされた場合、その差押えの効力は換地予定地や確定した換地にも及び、その後に建物登記を備えた賃借権は競落人に対抗できない。また、換地予定地そのものについて設定された賃借権は、従前の土地を取得した新所有者に対抗できない。 第1 事案の概要:従前の土地について、…
あてはめ
換地予定地の指定は使用収益の対象を一時的に移転させるものにすぎず、賃貸借契約の基礎となる契約関係を直ちに消滅させるものではない。したがって、賃料支払義務も当然には変更されず、従前の約定賃料が存続すると解される。本件において、賃借人が従前の地積に応じた賃料全額を提供したことは正当な義務の履行であり、これを受領すると換地予定地の地積を承認したことになるとする賃貸人の主張は独自の見解にすぎず、正当な受領拒絶の理由とはならない。ゆえに、賃貸人が受領を拒否する意思を明確にしていた以上、賃借人による供託は有効である。
結論
賃借人は従前の土地の地積による約定賃料を弁済する義務と利益を有し、賃貸人がその受領を拒むことは正当化されない。したがって、賃借人による供託は有効であり、賃貸借契約は有効に存続する。
実務上の射程
土地区画整理における換地予定地指定後の賃貸借関係の存続を認める際の基礎となる判例である。賃料増減請求権等の行使がない限り、形式的に従前の約定賃料の提供が有効な弁済提供(または供託の前提)となることを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)683 / 裁判年月日: 昭和38年9月13日 / 結論: 棄却
賃貸人の承諾を得て賃貸土地の転貸がなされた後に当該賃貸土地の所有権に変動があつた場合において、新所有者が賃貸人の地位を承継したときは、新所有者は転借権の付着した賃貸借関係を承継するものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和37(オ)1165 / 裁判年月日: 昭和39年1月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の合意解除が認められない状況下で、転借人が賃貸人の承諾を得て賃借人(転貸人)に賃料を支払った場合、その支払は民法613条の趣旨に照らし、賃貸人に対する関係でも有効な支払として免責の効果が生じる。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)と賃借人(訴外D)との間の賃貸借契約が存続している状況にお…
事件番号: 昭和27(オ)1293 / 裁判年月日: 昭和29年10月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地所有者は、特別都市計画による換地予定地の指定がなされたとしても直ちに土地の所有権を失うものではなく、依然として当該土地の不法占拠者に対して明渡しを請求することができる。 第1 事案の概要:土地所有者である原告が、被告による土地の不法占拠に対し、所有権に基づき当該土地の明渡しを求めた。これに対し…
事件番号: 昭和37(オ)238 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 破棄差戻
従前の土地の一部を賃借する者は、土地区画整理法に定める権利申告の手続をして土地区画整理事業の施行者から仮に使用収益しうべき部分の指定をうけないかぎり、仮換地につき使用収益することができない。