裁判上の自白は当事者の訴訟行為としての陳述であることを要し、本人尋問において自己に不利益な事実が真実であると供述しても、右供述は自白とはならない。
本人尋問において自己に不利益な事実が真実であると供述した場合と裁判上の自白。
民訴法257条
判旨
裁判上の自白が成立するためには、当事者の訴訟行為としての陳述であることを要し、当事者本人尋問における不利益な事実の供述はこれに該当しない。
問題の所在(論点)
当事者本人尋問における不利益な事実の供述が「裁判上の自白」に該当し、不要証効および審判権の拘束力を生じるか。
規範
裁判上の自白(民事訴訟法179条参照)が成立し、裁判所および当事者を拘束するためには、その陳述が当事者の「訴訟行為としての陳述」であることを要する。
重要事実
上告人は、被上告人との間で株式買受契約が成立したと主張したが、被上告人らは契約の成立を否認し、契約は未完成であると争っていた。原審において、被上告人が当事者本人尋問の中で自己に不利益な事実(契約成立を肯定するような事実)を供述した。上告人は、この供述により裁判上の自白が成立したため、契約不成立の認定は違法であると主張して上告した。
あてはめ
裁判上の自白は、弁論(口頭弁論または準備手続)における相手方の主張と一致する不利益な事実の陳述であって、当事者が訴訟の進行を支配し意思的に行う「訴訟行為」としての性質を有するものである。これに対し、当事者本人尋問における供述は、当事者が証拠方法として「証拠調べ」の対象となっているものであり、その内容はあくまでも証拠資料にすぎない。したがって、たとえ自己に不利益な事実を供述したとしても、それは自由心証による評価の対象となるにとどまり、裁判所を拘束する自白としての効力は生じない。
結論
当事者本人尋問における不利益な供述は裁判上の自白とはならない。したがって、当該供述にかかわらず証拠上契約の不成立を認めた原判決に違法はない。
実務上の射程
自白の撤回や不要証効の有無を論ずる際に、当該陳述が「訴訟行為(弁論)」か「証拠調べ(尋問)」かを区別する際の根拠として用いる。当事者本人の供述であっても、尋問手続内のものは証拠資料としての評価を受けるにすぎないことを明確にする際に有用である。
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