控訴審においてした請求の拡張が、その実質において附帯控訴と認めうるものであり、それに対して相手方が異議を述べず、その方式も民訴法第三七四条、第三六七条に反する点が認められない場合には、右拡張部分を認容しても、不利益変更の原則に違反しない。
控訴審においてした請求の拡張を実質的には附帯控訴であるとして右拡張部分を認容しても不利益変更にならないとされた事例。
民訴法372条,民訴法374条,民訴法367条,民訴法385条
判旨
控訴審における原告(被控訴人)による請求の拡張は、実質的に附帯控訴の性質を有するものであり、附帯控訴の方式を遵守し、かつ相手方が異議を述べないなどの事情がある場合には適法に認められる。
問題の所在(論点)
控訴審において、被控訴人が附帯控訴の手続を経ることなく、単なる「請求の変更(拡張)」として第一審での請求を拡張することが認められるか。また、その際に附帯控訴としての方式をどの程度要求すべきかが問題となる。
規範
控訴審において被控訴人が請求を拡張する場合、それは実質的に附帯控訴(民事訴訟法293条)の性質を有する。したがって、附帯控訴の方式(民訴法293条、261条3項等)を履践し、請求の基礎に変更がなく、かつ訴訟手続を著しく遅滞させない限り、請求の拡張は許容される。
重要事実
第一審で勝訴した原告(被控訴人)が、控訴審において本訴請求を拡張する旨の申立てを行った。これに対し、被告(上告人)側は、当該請求の拡張について訴訟記録上何ら異議を述べていなかった。原審はこの請求の拡張を附帯控訴の実質を持つものとして認め、拡張された限度で請求を認容したため、被告側が手続の違法を理由に上告した。
あてはめ
本件では、被控訴人の請求拡張は実質的に附帯控訴と認められる。手続面においても、民訴法上の方式に反する点は認められない。また、上告人側は原審においてこの請求拡張に対し一切異議を述べておらず、手続的保障も欠いていない。したがって、原審が拡張後の請求を認容した判断は正当であり、訴訟法上の違法は存在しないと判断される。
結論
控訴審における請求の拡張は、実質的に附帯控訴としての要件を満たす限りにおいて適法であり、相手方が異議なく応訴している場合にはこれに基づく判決をすることができる。
実務上の射程
被控訴人が第一審判決よりも有利な判決を求める場合には、原則として附帯控訴が必要となるが、実務上は請求の変更(民訴法143条)の手続によっても、附帯控訴の実質を備え、相手方の防御権を侵害しない限り有効に請求を拡張できることを示す。答案上は、附帯控訴の要否と請求の変更の可否が交錯する場面で使用する。
事件番号: 昭和35(オ)431 / 裁判年月日: 昭和36年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審が第一審判決を取消して自判する場合、主文に「取消す」と掲げるか「次の通り変更する」と掲げるかは文言の用法の違いに過ぎず、不服申立ての理由の有無が明白であればいずれの方法も適法である。 第1 事案の概要:賃借権譲渡の承諾の有無等が争点となった事案において、第一審判決に対し被上告人(賃貸人・控訴…
事件番号: 昭和38(オ)435 / 裁判年月日: 昭和39年5月29日 / 結論: 棄却
一 控訴審における請求の拡張は、請求の基礎に変更がない場合は勿論、たとえ請求の基礎に変更があつても、相手方が異議なく応訴した場合は許されるべきである。 二 請求の拡張についての書面の提出または送達の欠缺は、責問権の喪失によつて治癒される。