判旨
控訴審が第一審判決を取消して自判する場合、主文に「取消す」と掲げるか「次の通り変更する」と掲げるかは文言の用法の違いに過ぎず、不服申立ての理由の有無が明白であればいずれの方法も適法である。
問題の所在(論点)
控訴審が第一審判決を取消して自判を行う際、主文において「原判決を次の通り変更する」という形式を用いることは、旧民事訴訟法385条、386条(現行305条、306条参照)の規定に照らし許されるか。
規範
控訴審において第一審判決に不服申立ての理由があるとしてこれを取り消し、自ら判決(自判)を行う場合、その主文の形式は、「原判決を取消す」との文言に併せて自判事項を掲げる方法でも、「原判決を次の通り変更する」との文言に次いで自判事項を掲げる方法でもよい。両者は単に文言の用法を異にするに過ぎず、実質的な主文の内容において何ら差異はないため、控訴人の不服申立ての理由がある限度が明白である限り、いずれの方法を採ることも適法である。
重要事実
賃借権譲渡の承諾の有無等が争点となった事案において、第一審判決に対し被上告人(賃貸人・控訴人)が控訴した。控訴審(原審)は、第一審判決のうち建物明渡請求および損害金の一部請求を認容すべきと判断し、その限度で控訴に理由があると認めた。原審は、主文において「原判決を次の通り変更する」との文言を用い、自判事項として建物明渡と損害金の支払を命じ、その余の請求を棄却する旨を掲げた。これに対し上告人が、主文の表示方法に違法がある旨を主張して上告した。
あてはめ
控訴審は、第一審判決を不当と認める場合に、不服申立ての理由がある限度でこれを取り消し、または変更すべきものである。本件原審は、被上告人の請求のうち建物明渡等に関する部分については第一審判決と所見を異にしてこれを認容し、その余の請求については不当として排斥した。原審が「原判決を次の通り変更する」との形式を選択し、その後に認容部分と棄却部分を併記したことは、被上告人の不服申立てに理由がある限度とない限度を明確に示すものといえる。したがって、実質において第一審判決を取消して自判することと何ら変わりはなく、判決手続に違法はない。
結論
控訴審が「原判決を次の通り変更する」との文言を用いて自判事項を掲げることは適法である。
実務上の射程
本判決は旧民訴法下のものだが、現行法においても控訴審の主文形式(取消自判か変更か)の許容範囲を示す実務上の指針となる。結論として不服申立ての範囲が明確であれば形式は問われないため、答案上、主文の記載の当否が問題となる場面で、形式的瑕疵が実質的な違法を構成しない根拠として引用できる。
事件番号: 昭和33(テ)36 / 裁判年月日: 昭和35年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決の言渡しは、弁論に関与した裁判官が作成した判決原本に基づき、同一裁判所の別の裁判官が公開法廷で主文を朗読する方法によっても適法に行うことができる。 第1 事案の概要:大阪簡易裁判所における第一審判決において、弁論に関与した裁判官(A)が判決原本を作成し署名捺印した。実際の言渡しは、同裁判所の別…