判旨
判決の言渡しは、弁論に関与した裁判官が作成した判決原本に基づき、同一裁判所の別の裁判官が公開法廷で主文を朗読する方法によっても適法に行うことができる。
問題の所在(論点)
弁論に関与していない裁判官が、弁論に関与した裁判官の作成した判決原本に基づき主文を朗読して行う判決の言渡しは、民事訴訟法上および憲法上適法か。判決の成立要件としての言渡し手続の適法性が問題となる。
規範
判決の言渡し手続(民事訴訟法254条等)において、憲法上の公開原則(憲法82条)を満たし、かつ、弁論に関与した裁判官が作成・署名捺印した判決原本に基づき、同一裁判所の裁判官が主文を朗読してこれを行う場合は、適法な判決の言渡しとしての効力を有する。
重要事実
大阪簡易裁判所における第一審判決において、弁論に関与した裁判官(A)が判決原本を作成し署名捺印した。実際の言渡しは、同裁判所の別の裁判官(B)が、裁判所書記官補列席の下、公開法廷で右判決原本に基づき主文を朗読する方法で行われた。この手続について言渡調書が作成され、裁判官Bおよび書記官補が適式に署名捺印した。上告人は、この言渡し手続が違憲であると主張して特別上告を申し立てた。
あてはめ
本件では、判決原本は弁論に関与した裁判官によって適式に作成・署名捺印されており、判決の内容自体は正当な権限を有する裁判官によって確定されている。その言渡しは、同一裁判所の裁判官によって、公開の法廷という憲法が要求する公開原則を遵守した形で行われており、その録取も言渡調書により証されている。したがって、言渡しを担当する裁判官が弁論に関与した裁判官と異なることは、判決の効力を左右するような違憲・違法な手続とはいえない。
結論
本件の第一審判決の言渡し手続に違憲の事由は認められず、適法である。したがって、特別上告は棄却される。
実務上の射程
判決の「成立」と「言渡し」を区別し、言渡しという形式的手続については弁論に関与した裁判官自身が直接行うことまでは要しないことを示している。実務上、判決書の作成と合議の結果が担保されている限り、言渡し事務の代行は許容される。答案上は、判決の無効や手続違背を争う場面で、形式的な言渡し行為の主体のみを捉えて無効を主張することはできないという文脈で活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)436 / 裁判年月日: 昭和39年1月28日 / 結論: 棄却
控訴審においてした請求の拡張が、その実質において附帯控訴と認めうるものであり、それに対して相手方が異議を述べず、その方式も民訴法第三七四条、第三六七条に反する点が認められない場合には、右拡張部分を認容しても、不利益変更の原則に違反しない。