一 控訴審における請求の拡張は、請求の基礎に変更がない場合は勿論、たとえ請求の基礎に変更があつても、相手方が異議なく応訴した場合は許されるべきである。 二 請求の拡張についての書面の提出または送達の欠缺は、責問権の喪失によつて治癒される。
一 控訴審における請求の基礎の変更に基づく請求の拡張と相手方が異議を述べなかつた場合の効果。 二 書面の提出または送達のない訴の変更と責問権の喪失。
民訴法232条
判旨
控訴審における請求の拡張は、請求の基礎に変更がない場合はもちろん、変更がある場合でも相手方が異議なく応訴すれば許容され、書面提出等の手続的欠缺も責問権の喪失により治癒される。
問題の所在(論点)
控訴審において請求の基礎に変更がある可能性のある請求の拡張がなされた場合、相手方が異議なく応訴することでその適法性が担保されるか。また、書面提出等の手続的要件の不備は責問権の喪失によって治癒されるか。
規範
1. 控訴審における請求の拡張は、請求の基礎に変更がない場合はもちろん、たとえ請求の基礎に変更があったとしても、相手方が異議なく応訴した場合には、民事訴訟の原則に照らし許容される。2. 請求拡張に際して必要となる書面の提出または送達の欠缺といった手続上の不備は、相手方が異議なく本案の弁論を行うなど、責問権の喪失(放棄)によって治癒される。
重要事実
被上告人(原告)は、第一審において上告人(被告)A1に対して土地明渡しを選択的に求めていたが、控訴審の口頭弁論において、A1およびA2の両名に対して明渡しを求める旨の請求の拡張を行った。この際、上告人らは請求の基礎の変更や手続的欠陥について異議を述べることなく応訴した。その後、上告人らは原審が請求拡張を認めて判決したことは民訴法(当時186条、現246条)の判決事項に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和39(オ)573 / 裁判年月日: 昭和40年12月2日 / 結論: 棄却
訴の変更があつた場合においては、従前の訴訟資料はそのまま引きつがれると解するのが相当である。
あてはめ
本件では、控訴審の口頭弁論期日において、被上告人がA1およびA2に対する請求の拡張を陳述したことが記録上明らかである。これに対し、上告人らは請求の基礎の変更の有無や書面提出の欠缺について何ら異議を述べることなく、本案について応訴している。かかる態様は「異議なく応訴」したものと認められ、請求拡張の許容性が認められるとともに、手続的な不備も責問権の喪失によって治癒されたといえる。
結論
控訴審での請求拡張は有効であり、原審が拡張後の請求に基づき判決を言い渡したことに判決事項の範囲を逸脱した違法はない。
実務上の射程
訴の変更(143条)や請求の拡張に伴う手続的瑕疵(書面主義違反)について、相手方の無異議応訴による責問権喪失(民訴規則90条参照)の法理を認める実務上の確立した先例である。答案上は、手続違背を主張する相手方に対し、応訴の事実を拾って「手続的瑕疵は治癒された」と反論する文脈で使用する。
事件番号: 昭和35(オ)1193 / 裁判年月日: 昭和38年6月4日 / 結論: 棄却
一 甲を被告としてA建物の一部につき使用貸借の終了を原因とする明渡請求をするとともに、乙を共同被告としてA建物の右以外の部分およびB建物などの不法占拠を理由とする明渡請求をする訴の係属中に、乙が退去し、事後甲が乙の占拠していた右部分およびB建物などを占有するに至つた場合、A建物全部とB建物などにつきいずれも所有権に基づ…
事件番号: 昭和49(オ)453 / 裁判年月日: 昭和49年9月20日 / 結論: 棄却
控訴審において債務承継人に対し訴訟の引受を命ずることは、憲法三二条に違反しない。
事件番号: 昭和37(オ)1034 / 裁判年月日: 昭和38年5月31日 / 結論: 棄却
数個の証拠を総合して事実を認定した場合に、右証拠のうちに認定事実と矛盾するものがあつても、残余の証拠によつて右事実が認定できる以上は、右違法は民訴第三九四条にいわゆる判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違背にあたらない。