一 甲を被告としてA建物の一部につき使用貸借の終了を原因とする明渡請求をするとともに、乙を共同被告としてA建物の右以外の部分およびB建物などの不法占拠を理由とする明渡請求をする訴の係属中に、乙が退去し、事後甲が乙の占拠していた右部分およびB建物などを占有するに至つた場合、A建物全部とB建物などにつきいずれも所有権に基づき甲を被告とする明渡請求に訴を変更することは、請求の基礎に変更がないから許される。 二 訴の変更を許容する旨の判断は、中間裁判をもつてなされなくてもよく、終局判決の理由中で示されれば足りる。
一 請求の基礎に変更がないとされた事例 二 訴の変更を許容する旨の判断は中間裁判をもつてなされなければならないか
民訴法232条,民訴法233条
判旨
訴状等の訴訟書類に貼用すべき印紙に不足がある場合でも、訴訟係属中であれば不足分を追貼させることで、提出時に遡って有効なものとすることができる。
問題の所在(論点)
訴訟書類(請求の趣旨訂正申立書等)に貼用すべき印紙に不足がある場合、後日これを追貼することで、提出時に遡って有効な書類として扱うことができるか。
規範
訴訟書類の正本に貼用すべき印紙に不足があった場合、その訴訟係属中である限り、いつでも相当印紙を貼用させることによって、当該書類を提出の時に遡って有効なものとすることができる。
重要事実
被上告人は、上告人に対し建物の明渡等を求めて提訴し、原審において請求の基礎に変更がないとして訴の変更を申し立てた。その際、被上告人が提出した2通の「請求の趣旨訂正申立書」には貼用すべき印紙に不足があった。しかし、原判決の言渡し後に不足分の印紙が追貼されたため、原審はこれを適法なものとして判決を行った。これに対し上告人が、印紙の不備を理由として訴の変更の効力等を争い、上告した事案である。
事件番号: 昭和37(オ)1034 / 裁判年月日: 昭和38年5月31日 / 結論: 棄却
数個の証拠を総合して事実を認定した場合に、右証拠のうちに認定事実と矛盾するものがあつても、残余の証拠によつて右事実が認定できる以上は、右違法は民訴第三九四条にいわゆる判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違背にあたらない。
あてはめ
被上告人が提出した請求の趣旨訂正申立書には、提出時点で印紙の不足があった。しかし、記録によれば、原判決言渡し後に不足分が適正に追貼されている。訴訟係属中であれば追完が可能であるという原則に照らせば、この追貼によって当該申立書は提出当時に遡って有効なものとなったといえる。したがって、印紙不足を理由に当該申立を無効とすべきであるとの上告人の主張は認められない。
結論
印紙の不足は訴訟係属中に追完すれば遡及的に有効となるため、原審が訴の変更を許容し判決を行ったことに違法はない。
実務上の射程
訴状や申立書における印紙の貼付は手数料納付の手段であり、訴訟係属中に是正されれば訴訟経済の観点から遡及的有効性を認めるのが判例の実務である。答案上は、訴訟要件の欠陥が後天的に治癒される場面(追完)の一般法理として引用できる。
事件番号: 昭和38(オ)435 / 裁判年月日: 昭和39年5月29日 / 結論: 棄却
一 控訴審における請求の拡張は、請求の基礎に変更がない場合は勿論、たとえ請求の基礎に変更があつても、相手方が異議なく応訴した場合は許されるべきである。 二 請求の拡張についての書面の提出または送達の欠缺は、責問権の喪失によつて治癒される。
事件番号: 昭和39(オ)573 / 裁判年月日: 昭和40年12月2日 / 結論: 棄却
訴の変更があつた場合においては、従前の訴訟資料はそのまま引きつがれると解するのが相当である。
事件番号: 昭和38(オ)1407 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
請求権保全の仮登記でも、これに基づく本登記がなされたときは、仮登記以後におけるこれと相容れない中間処分の効力を否定する効果を有するものと解すべきであり、所有権移転請求権保全の仮登記以後における所論賃借権の設定も右にいう仮登記と相容れない中間処分たるを失わない(昭和三三年(オ)第八七一号同三六年六月二九日第一小法廷判決、…
事件番号: 昭和37(オ)1165 / 裁判年月日: 昭和39年1月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の合意解除が認められない状況下で、転借人が賃貸人の承諾を得て賃借人(転貸人)に賃料を支払った場合、その支払は民法613条の趣旨に照らし、賃貸人に対する関係でも有効な支払として免責の効果が生じる。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)と賃借人(訴外D)との間の賃貸借契約が存続している状況にお…