一 相手方の陳述した事実に基づいて訴の変更をする場合には、請求の基礎に変更があるときでも、相手方の同意の有無にかかわらず、訴の変更は許されると解すべきである。 二 前項の場合における相手方の陳述した事実には、いわゆる積極否認の内容となる間接事実も含まれると解すべきである。
一 相手方の陳述した事実に基づいてする訴の変更は請求の基礎に変更がる場合にも許されるか。 二 前項の相手方の陳述した事実にはいわゆる積極否認の内容となる事実を含むか。
民訴法232条1項
判旨
相手方の提出した防御方法や積極否認に係る事実を是認して新請求の原因とする場合、請求の基礎に変更がある訴えの変更であっても、相手方は異議を述べてその不許可を主張することはできず、現実に同意がなくとも許容される。
問題の所在(論点)
民事訴訟法143条1項(旧232条1項)が定める「請求の基礎に変更がない」といえない場合であっても、被告側の主張を前提とした請求の追加(訴えの変更)は許されるか。また、積極否認における事実もその基礎となり得るか。
規範
相手方が提出した防御方法を是認した上で、その相手方の主張事実に立脚して新たに請求をする場合(相手方の陳述した事実を新請求の原因とする場合)には、仮にその新請求が「請求の基礎」を変更する訴えの変更であっても、相手方が同意したかどうかにかかわらず、右の訴えの変更は許される。なお、ここでいう「相手方の陳述した事実」には、狭義の抗弁や再々抗弁のみならず、請求原因を否認して付加陳述する積極否認の内容となる重要な間接事実も含まれる。
重要事実
被上告人(原告)は、当初、建物は自己の所有であるとして、上告人先代(被告)に対し建物の明け渡し等を請求した。これに対し被告は、当該建物は自己が新たに建築したものであり被告の所有に属する旨を主張して(積極否認)、原告の所有権を否定した。そこで原告は、被告の主張に従い建物が被告所有であることを前提として、土地所有権に基づき建物の収去及び土地の明け渡しを求める請求を予備的に追加した。
あてはめ
本件において、被上告人は当初の建物明渡請求を維持しつつ、被告側の積極否認の内容である「建物は被告所有である」という事実を是認し、これに基づいて建物収去土地明渡請求を予備的に追加している。このように、被告が自ら提出した防御方法や主張事実に立脚して新請求が行われる場合、被告側にとって不測の不利益はなく、防御の便宜を損なうこともない。したがって、請求の基礎に変更があるか否かにかかわらず、このような訴えの変更は許容されるべきである。また、その基礎となる事実は積極否認に係るものであっても同様である。
結論
被告の主張に基づき新請求を追加する訴えの変更は、被告の同意の有無や請求の基礎の同一性を問わず許容される。本件の訴えの変更を認めた原審の判断は相当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
「請求の基礎の同一性」の要件を緩和または擬制する判例として重要である。実務上は、紛争の一回的解決や被告の防御の利益が害されないことを根拠に、被告の主張を取り込む形での訴えの変更を広く認める論拠として活用できる。答案上は、被告の主張と矛盾しない請求への変更であれば、本判例を引用して直ちに許容されると論じることが可能である。
事件番号: 昭和39(オ)1395 / 裁判年月日: 昭和41年1月21日 / 結論: 棄却
訴の交換的変更による新訴に異議なく応訴した被告は、旧訴の取下について暗黙の同意をしたものと解するのが相当である。