貸金業を営む有限会社が営業行為としてなした金銭消費貸借は、商法施行法第一一七条(昭和二九年法律第一〇〇号による削除前)にいう商事にあたる。
貸金業を営む有限会社が営業行為としてなした金銭消費貸借は商法施行法第一一七条(昭和二九年法律第一〇〇号による削除前)にいう商事にあたるか
商法117条(昭和29年法律100号による削除前),旧利息制限法(明治10年太政官布告66号),有限会社法2条
判旨
抵当権は不可分性を有するため、被担保債権の一部が弁済により消滅しても、残存債務がある限り抵当権は変更消滅せず、その目的物の全部について効力を及ぼす。
問題の所在(論点)
被担保債権の一部が消滅した場合において、抵当権は依然として存在するといえるか。抵当権の不可分性の適用の有無が問題となる。
規範
抵当権は不可分性を有する(民法296条、372条)。そのため、被担保債権の一部が弁済等により消滅し、債権額が減少したとしても、残存債務がある以上、抵当権はその効力を減じることなく目的物の全部の上に存続する。
重要事実
被上告人(有限会社)は、貸金を業とする商人とみなされる主体であり、上告人との間で金銭消費貸借契約を締結し、その担保として本件抵当権を設定した。上告人は、被担保債権の一部が消滅したことを理由に、本件抵当権の不存在確認を求めて提訴した。原審は、一部の消滅を認めつつも残存債務があることを理由に請求を棄却したため、上告人が上告した。
事件番号: 昭和34(オ)321 / 裁判年月日: 昭和37年3月15日 / 結論: その他
貸金債務担保のために債務者所有の不動産に抵当権設定登記がなされた後、債務者においていつたん右債務の元利金を弁済し、さらに翌日同一債権者より同一金額を、弁済期の点以外はすべて旧債務と同一の条件で借り受け、これが担保として同一不動産につき抵当権を設定し、当事者間の合意によつて、旧債務についてなされてあつた前記抵当権設定登記…
あてはめ
本件における消費貸借は、有限会社である被上告人が営業行為として行った商事貸借である。この債権を担保する本件抵当権について検討するに、抵当権の性質として不可分性が認められる。上告人が主張するように被担保債権の一部が弁済等によって消滅したとしても、依然として残存債務があることが認められる。そうであれば、抵当権の不可分性により、残部を担保するために抵当権は目的物全体に存続し続けるため、抵当権が消滅したということはできない。
結論
被担保債権に残存債務がある以上、一部消滅を理由とする抵当権不存在確認の請求は認められない。
実務上の射程
抵当権の不可分性を確認した基本的判例である。答案上は、債務者による抵当権消滅請求や、一部弁済による抵当権設定登記の抹消請求を否定する際の根拠として用いる。ただし、債務の全部が消滅した場合には附随性により消滅することとの対比に注意を要する。
事件番号: 昭和37(オ)1355 / 裁判年月日: 昭和39年12月25日 / 結論: 棄却
抵当権設定登記をする前に被担保債権の一部が弁済されても、債権者はその債権全額について右登録手続を請求することができる。
事件番号: 昭和35(オ)234 / 裁判年月日: 昭和37年10月5日 / 結論: その他
甲乙丙三棟の建物を所有する債務者が、未登記の甲建物の所有権保存登記をなすべく司法書士に委任したところ、甲建物を主たる建物、乙丙建物を付属建物と表示する登記がなされ、次いで、債権者の手により甲乙丙建物を目的物とする抵当権設定登記が経由されたのに対し、抵当権設定契約の不存在を理由として右抵当権設定登記の抹消登記手続を請求す…
事件番号: 昭和39(オ)1367 / 裁判年月日: 昭和40年12月3日 / 結論: 棄却
一 債権担保の機能を営む代物弁済の予約がされた後、被担保債権の一部が弁済されても、反対の特約または権利の濫用と認められるような特段の事由がないかぎり、当該予約完結権の行使は妨げられない。 二 前項の場合において、予約完結権を行使した債権者は、特段の事情がないかぎり、一部弁済としてすでに受領した金員を債務者に返還する義務…
事件番号: 昭和30(オ)632 / 裁判年月日: 昭和33年5月9日 / 結論: 棄却
被担保債権である現存の債権および将来成立すべき条件付債権を、現存の貸金債権と表示してなされた抵当権設定登記であつても、当事者が真実その設定した抵当権を登記する意思で登記手続を終えた以上、これを当然に無効のものと解すべきではない