旧商標法(大正一〇年法律第九九号)にいう「営業ノ廃止」とは、商標権者が自発的意思によつて積極的にその営業を廃止する場合をいうと解すべきである。
旧商標法(大正一〇年法律第九九号)にいう「営業ノ廃止」。
旧商標法(大正10年法律99号)13条
判旨
旧商標法13条にいう「営業の廃止」とは、商標権者が自発的な意思によって積極的に営業を廃止する場合を指し、同族会社を設立して営業を承継させる場合はこれに当たらない。また、戦争等の外部的事情によりやむなく営業を廃止した場合も、特段の事情がない限り自発的な営業廃止の意思があるとは認められない。
問題の所在(論点)
1. 同族会社設立に伴う営業承継が旧商標法13条の「営業の廃止」に該当するか。2. 戦時下の企業整備令等によるやむを得ない営業中止が「営業の廃止」に該当するか。3. 将来的な法規撤廃を見越した商標権の譲受は会社の目的の範囲内(権利能力の範囲内)といえるか。
規範
旧商標法13条(現行法には直接の規定はないが商標権の存続に関する法理として重要)の「営業を廃止した」場合とは、商標権者が自発的な意思によって積極的に(自ら進んで)営業を廃止してしまう場合を指すと解すべきである。また、将来的に統制が撤廃された際に本来の目的を遂行し得る状態にあれば、権利能力の範囲内の行為として有効に商標権を承継できる。
重要事実
商標権者Dは、同族会社である株式会社E商店を設立し、従前の個人営業を廃止すると同時に、当該会社に営業および本件各商標権を譲渡した。しかし、移転登録の時期が遅れたことから、譲渡後の期間についてDの「営業の廃止」により商標権が当然消滅したのではないかが争点となった。また、戦時下の企業整備令により営業停止を余儀なくされていた事情や、会社の目的範囲外の事業に属する商標権取得の可否も問題となった。
事件番号: 昭和38(オ)491 / 裁判年月日: 昭和39年11月26日 / 結論: 棄却
甲乙双方の同一内容の標章を有する二つの商標権が登録されている場合には、右標章を使用している甲から乙の商標登録の無効審判が特許庁に請求され、乙の商標登録を無効とする審決に対し乙から右審決取消の訴が提起され、その訴訟が繋属中であつても、前記標章を現に使用している乙は、甲に対し、甲の商標権が営業廃止により消滅したとして、右商…
あてはめ
1. Dは同族会社を設立して営業と商標権を承継させており、これは営業の存続を企図するものであるから、自発的に営業を廃止する意思によるものとはいえず、「営業の廃止」に当たらない。2. 企業整備令という外部的要因により営業を廃止せざるを得なかった事象は、特段の事情がない限り、自発的な意思による積極的な営業廃止とは認められない。3. E商店の目的が「菓子その他食料品の販売」である以上、主食原料の統制が将来撤廃された際に菓子類を販売できる状態にあれば、本件商標権の譲受は権利能力の範囲内に含まれる。
結論
商標権者による同族会社への営業承継や、外部的事情による不本意な営業中止は「営業の廃止」に当たらず、本件商標権は消滅していない。また、将来の事業遂行を見越した商標権譲受は有効である。
実務上の射程
商標権の消滅事由としての「廃止」を限定的に解釈し、営業の実質的な継続性や意思の自発性を重視する。事業承継や法人化の場面において、形式的な個人事業の廃止が直ちに商標権の消滅を招かないことを論証する際に有用である。
事件番号: 昭和34(オ)832 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
商標権者が単に経済上の理由から事業を中止したに過ぎず、営業を廃止する主観的意図が認められない場合には、商標法(昭和三四年改正前)の営業廃止にあたらない。
事件番号: 昭和33(オ)1030 / 裁判年月日: 昭和36年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標権は、商標権者がその営業を廃止したときは、旧商標法13条(現行法の解釈においても同様)により当然に消滅し、たとえ商標登録の抹消がなされていなくても、その後に営業廃止前の商標権を譲り受けることはできない。 第1 事案の概要:D社は昭和18年に解散決議を行い清算手続に入った。清算人が清算事務完了を…
事件番号: 昭和33(オ)495 / 裁判年月日: 昭和37年1月16日 / 結論: 棄却
原判決引用の第一審判決の認定事実関係のもとで、当該会社が二年以上商号を使用しなかつたことに正当事由がないとして、その商号権の消滅を判断したことは是認できる。
事件番号: 昭和40(行ツ)60 / 裁判年月日: 昭和43年11月5日 / 結論: 棄却
旧商標法(大正一〇年法律第九九号)第一二条第一項にいう商標権をその営業とともに移転するとは、商標権の譲渡人が従来その商標を使用した指定商品の営業において以後これを使用せず、譲受人がその商標を使用して譲渡人と同様の指定商品の営業をなしうる状態を現出すれば足り、その譲渡される商標権とともにこれを行使していた範囲の営業がこと…