旧商標法(大正一〇年法律第九九号)第一二条第一項にいう商標権をその営業とともに移転するとは、商標権の譲渡人が従来その商標を使用した指定商品の営業において以後これを使用せず、譲受人がその商標を使用して譲渡人と同様の指定商品の営業をなしうる状態を現出すれば足り、その譲渡される商標権とともにこれを行使していた範囲の営業がことごとく包括的に移転されることを要するものではない。
旧商標法第一二条第一項にいう商標権をその営業とともに移転するとの意義
旧商標法(大正10年法律第99号)12条
判旨
旧商標法12条1項にいう「営業とともに」する商標権の移転とは、譲渡人が商標の使用を止め、譲受人が譲渡人と同様の営業をなしうる状態を現出させれば足り、必ずしも営業の悉くを包括的に移転することを要しない。
問題の所在(論点)
旧商標法12条1項の「営業とともにする場合に限り」商標権を移転できるとする要件において、営業の「一部」の移転や、製造設備の一部譲渡による移転が認められるか。
規範
商標権の移転に営業の随伴を求める趣旨は、商品の品質・特性を維持し需要者の信頼を保護することにある。したがって、譲渡人が従来その商標を使用した指定商品の営業につき以後これを使用せず、譲受人がその商標を使用して譲渡人と同様の指定商品の営業をなしうる状態を現出するならば、「営業とともに」移転されたものと解すべきである。この場合、必ずしも当該範囲の営業が悉く包括的に移転される必要はなく、一部の移転であっても、上記状態が確保される限りは足りる。
重要事実
D社は王冠(金属製壜栓)の製造設備を有し、自家用のほか他社への製造販売も営業として行っていた。D社は過度経済力集中排除法の指定を受け、新会社として被上告会社等を設立し、全資産を分割して現物出資し解散した。被上告会社は、この現物出資により本件商標権および王冠製造設備の一部(工場等)を取得した。上告人は、営業の全部が包括的に移転されていないとして商標権移転の無効を主張した。
あてはめ
D社は王冠の製造販売を営業として現に行っていた。被上告会社への現物出資に際し、D社は解散して商標の使用を終了する一方、被上告会社は本件商標とともに王冠の製造設備の一部(工場等)を取得している。これにより、譲受人である被上告会社が譲渡人と同様の営業を継続しうる状態が作り出されたといえる。営業のすべてを包括的に承継していなくとも、品質の同一性を維持しうる設備と共に移転している以上、同条の趣旨に反しない。
結論
商標権は営業とともに移転されたものと認められる。したがって、被上告会社への商標権移転は有効である。
実務上の射程
現行商標法では営業随伴性の要件は撤廃されている(24条の2)が、商標の機能(自他識別機能・品質保証機能)と営業実態の関係を論じる際の基礎理論として重要である。また、事業譲渡においてどの程度の資産承継があれば「営業」の移転といえるかという判断基準は、他の法領域(会社法上の事業譲渡等)における「営業」概念の解釈にも示唆を与える。
事件番号: 昭和41(行ツ)36 / 裁判年月日: 昭和43年12月13日 / 結論: 棄却
いずれも薬剤等を指定商品とした「リユーマゾロン」なる商標と「ロイマゾン」なる商標とは観念において類似するものと認むべきである。
事件番号: 昭和33(オ)1030 / 裁判年月日: 昭和36年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標権は、商標権者がその営業を廃止したときは、旧商標法13条(現行法の解釈においても同様)により当然に消滅し、たとえ商標登録の抹消がなされていなくても、その後に営業廃止前の商標権を譲り受けることはできない。 第1 事案の概要:D社は昭和18年に解散決議を行い清算手続に入った。清算人が清算事務完了を…
事件番号: 昭和39(行ツ)54 / 裁判年月日: 昭和43年11月15日 / 結論: 破棄自判
登録出願にかかる商標の指定商品が、旧商標法施行規則(大正一〇年農商務省令第三六号)所定の類別のうち、引用商標の指定商品をとくに除外したものであり、また、前者の指定商品が後者の指定商品とは品質・形状・用途等を異にする商品を含むものであるとしても、両者の指定商品は、必ずしもつねにその製造元・発売元を異にするものとはいえず、…
事件番号: 昭和42(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和43年2月9日 / 結論: 棄却
一、商標の使用があるとするためには、当該商標が、必ずしも指定商品に付されて使用されていることは必要ではないが、その商品との具体的関係において使用されていなければならない。 二、青星の文字を極端に変更、図案化した「(商標は末尾添付)」なる登録商標がその特殊形態または少なくとも取引上これと同視されるべき形態において使用され…