商標原簿に設定の登録をすることにより発生した商標権は、右原簿が滅失しても、その権利自体にはなんらの変動もきたさない。
商標原簿の滅失と商標権の帰すう
旧商標法(大正10年法律第99号)7条1項,商標ニ関スル審判其ノ他ノ手続ノ費用及登録ニ関スル件(大正10年勅令464号)2条,旧特許登録令(大正10年勅令第461号)13条,滅失シタル商標原簿ノ回復ニ関スル件(大正12年農商務省令臨9号)1条,滅失特許原簿回復規則(大正12年回令臨6号)1条
判旨
商標権は商標原簿への登録により発生するが、その後の原簿の滅失や回復手続の瑕疵は権利の存続に影響を及ぼさない。また、商標の類否は、称呼および観念の共通性に加え、取引者・需要者における商品の誤認混同のおそれを総合して判断される。
問題の所在(論点)
1. 商標原簿の滅失または回復手続の瑕疵が、既に登録された商標権の存続に影響を及ぼすか。2. 称呼および観念が共通し、誤認混同のおそれがある商標同士は類似するといえるか。
規範
1. 商標権は、設定の登録により発生するが、一旦発生した権利は商標原簿が滅失しても、そのことによって権利自体に変動を来すものではない。2. 商標の類否判断においては、商標の称呼および観念の共通性に加え、当該商標を商品に使用した場合に取引者および需要者の間において商品の誤認混同を生ずるおそれがあるか否かを基準とする。
重要事実
本願商標の登録出願に対し、特許庁は引用商標と類似するとして拒絶査定を下した。引用商標については、過去に商標原簿が滅失しており、その回復手続に瑕疵があったと主張された。また、引用商標と本願商標は清酒を構成商品としており、その称呼および観念が共通していたが、上告人は両者の非類似を主張して争った。
あてはめ
1. 引用商標は当初適法に設定登録されており、その後の原簿滅失や回復手続の成否にかかわらず、権利の内容は不変のまま存続している。したがって、滅失前の構成を前提に類否判断の対象とすることは正当である。2. 本願商標と引用商標を商品「清酒」に用いた場合、事情に通じた一部の業者を除き、一般の取引者・需要者の間では商品の誤認混同を生ずるおそれがある。両商標は称呼および観念を共通にしていることから、取引の実情を参酌すれば、両者は類似の商標にあたると評価できる。
結論
商標原簿の滅失は権利に影響せず、引用商標は有効に存続している。また、称呼・観念の共通性と誤認混同のおそれから、両商標は類似しており、本願商標の登録は認められない。
実務上の射程
商標権の発生における登録の対抗力的側面と、実体的権利の存続を峻別する際の根拠となる。類否判断においては、形式的な称呼・観念の比較だけでなく、取引の実情(需要者の誤認混同の具体的可能性)を重視する実務上の判断枠組みを補強するものである。
事件番号: 昭和38(オ)469 / 裁判年月日: 昭和42年5月2日 / 結論: 棄却
商標権者は、原登録商標の指定商品に類似する商品について、連合商標の商標登録を受けうる既得権を有するものではない。
事件番号: 昭和34(オ)448 / 裁判年月日: 昭和35年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の類似性判定において、過去に同一または類似の商標が併存していた事実があったとしても、現在の時点における類似性の認定を妨げるものではない。 第1 事案の概要:上告人は、自らの出願商標が引用商標と類似しないと主張して上告した。上告人は、出願商標の図形からは「トナカイ」または「鹿」の観念が生じるため…
事件番号: 昭和24(オ)133 / 裁判年月日: 昭和25年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の類否判断において、外観に相違がある場合であっても、構成部分から生ずる称呼及び観念が共通し、取引の実情に照らして商品の出所について混同を生ずるおそれがあるときは、類似の商標と解される。 第1 事案の概要:本件登録商標(「獅子印」等を含む図形商標。以下「本標章」)に対し、他者の商標(「クロライオ…