味淋、焼酎等の商品により世上一般に知られ著名化している甲商標と類似する乙商標の登録出願は、たとえその指定商品を食料品、加味品としたものであつても、その指定商品が甲商標使用の商品と同一店舗において取り扱われることが多いものと認められる以上、旧商標法(大正一〇年法律第九九号)第二条第一項第一一号にいう商品の誤認、混同を生じさせるおそれがあるものとして、許されない。
登録出願商標が商品の誤認、混同を生じさせるおそれがあるものと認められた事例
旧商標法(大正10年法律99号)2条
判旨
ある商標が世上一般に著名化している場合、商品自体が非類似であっても、同一店舗で取り扱われるなど取引実態に徴して出所の混同を生ずるおそれがあるときは、商標の登録を認めないのが相当である。
問題の所在(論点)
旧商標法2条1項11号(現行法4条1項15号相当)における「他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれ」の判断基準、特に商品が非類似である場合における混同の成否が問題となる。
規範
商標が著名化している場合、当該商標を周知させた商品と類似しない商品であっても、著名な商標と紛らわしい商標を使用すれば出所の混同が生じうる。混同のおそれの有無は、商品の種別、取引状態等を総合して判定すべきであり、本来の品質・形状・用途が異なるときでも、同一店舗において取り扱われることが多いといった取引の実態があれば、混同のおそれを肯定できる。
重要事実
上告人は、円輪郭の中に「寶」の文字を配した本願商標を、指定商品(パン等)について登録出願した。これに対し、味醂や焼酎等の製造販売業者である補助参加人は、同様に「寶」の文字を要部とする登録商標を有し、これらは「タカラ」として著名であった。原審は、本願商標と参加人商標が共に「タカラ」の称呼・観念を生じる類似商標であり、かつ両者の商品は同一店舗で併売される実態があるとして、出所の混同のおそれを認めた。
あてはめ
まず、本願商標の円輪郭は特異性がなく、囲まれた「寶」の文字が要部となる。参加人の商標も「タカラ」と判読可能な「寶」の字を要部としており、両者は称呼および観念において共通する類似の商標といえる。次に、参加人の商標は味醂・焼酎等を通じて世上一般に著名化している。さらに、本願商標の指定商品と参加人の商品は同一店舗で取り扱われることが多く、有力な製造販売業者が販売網を通じて食料品等を取り扱うことは自然な実情といえる。したがって、需要者は本願商標を見て参加人の出所に係る商品と誤認するおそれがある。
結論
本願商標は他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標に該当し、登録を受けることができない。
実務上の射程
著名商標の保護範囲を、直接の類似商品を超えて「出所の混同」が認められる範囲まで広げた事例として重要である。現在の実務(商標法4条1項15号)においても、商品間の類似性に加え、店舗の共通性やブランドの多角化といった取引実態を重視して混同のおそれを肯定する際の論理構成の基礎となる。
事件番号: 昭和33(オ)1104 / 裁判年月日: 昭和36年6月27日 / 結論: その他
一 商品自体が取引上互に誤認混同を生ずる虞がないものであつても、それらの商品に同一または類似の商標を使用するとき同一営業主の製造または販売にかかる商品と誤認混同される虞がある場合には、これらの商品は、旧商標法(大正一〇年法律第九九号)第二条第一項第九号にいう類似の商品にあたると解するのが相当である。 二 出願にかかる商…
事件番号: 昭和39(行ツ)54 / 裁判年月日: 昭和43年11月15日 / 結論: 破棄自判
登録出願にかかる商標の指定商品が、旧商標法施行規則(大正一〇年農商務省令第三六号)所定の類別のうち、引用商標の指定商品をとくに除外したものであり、また、前者の指定商品が後者の指定商品とは品質・形状・用途等を異にする商品を含むものであるとしても、両者の指定商品は、必ずしもつねにその製造元・発売元を異にするものとはいえず、…