一 商品自体が取引上互に誤認混同を生ずる虞がないものであつても、それらの商品に同一または類似の商標を使用するとき同一営業主の製造または販売にかかる商品と誤認混同される虞がある場合には、これらの商品は、旧商標法(大正一〇年法律第九九号)第二条第一項第九号にいう類似の商品にあたると解するのが相当である。 二 出願にかかる商標が原登録商標の連合商標として出願された場合であつても、それが登録を受けうるためには、他人の登録商標と類似していないことを必要とする。
一 旧商標法(大正一〇年法律第九九号)第二条第一項第九号にいわゆる指定商品の類似性の判定。 二 連合商標の登録の要件。
旧商標法(大正10年法律99号)1条,旧商標法(大正10年法律99号)2条1項9号,旧商標法(大正10年法律99号)3条
判旨
商標の類否は商品の出所について誤認混同を生ずる虞があるかにより判定すべきであり、商品の類否も、同一又は類似の商標を使用した際に同一営業主の製造・販売にかかる商品と誤認される虞がある関係にあるかにより判断すべきである。
問題の所在(論点)
旧商標法2条における「商標の類似」および「商品の類似」の判断基準、ならびに清酒と焼酎が類似の商品にあたるか。
規範
1. 商標の類否:商標を特定の地位に使用した場合に、商品の出所について誤認混同を生ずる虞があるか否かにより判定する。 2. 商品の類否:商品自体が取引上混同されるかではなく、それらの商品が通常同一営業主により製造・販売されている等の事情により、同一・類似の商標を使用した際に、同一営業主の出所に係る商品と誤認される虞がある関係にあるか否かにより判定する。
重要事実
上告人は、自己の登録商標「花橘正宗」(指定商品:清酒)の連合商標として「橘正宗」(指定商品:清酒)の登録出願を行った。しかし、特許局は、当該出願商標が第三者の登録商標「橘焼酎」(指定商品:焼酎)と類似することを理由に拒絶査定とした。原審は、清酒と焼酎は商品自体が混同されることはないとして商品の類似性を否定したが、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
1. 商標の類否について、「橘正宗」の「正宗」は清酒の慣用標章であり、「橘焼酎」の「焼酎」は普通名詞であるため、両者は「橘」という要部を共通にする。したがって、両商標は類似する。 2. 商品の類否について、実態として同一メーカーが清酒と焼酎の両方の製造免許を受けていることが多い。この事情に鑑みれば、たとえ清酒と焼酎という商品自体が混同されなくとも、同一の「橘」印を使用すれば同一営業主から出たものと一般消費者に誤認させる虞が明らかにある。よって、清酒と焼酎は類似の商品にあたる。
結論
本件出願商標「橘正宗」は第三者の登録商標「橘焼酎」と類似し、かつ指定商品も類似するため、登録は拒絶されるべきである。原判決を破棄し、被上告人の請求を棄却する。
実務上の射程
商標および商品の類否判断において「出所混同の虞」を中核に据えたリーディングケースである。特に商品の類似性について、商品自体の属性の共通性(物理的類似)よりも、取引実態を踏まえた「出所の共通性」を重視する判断枠組みは、現行商標法下の実務においても極めて重要な指針となっている。
事件番号: 昭和34(オ)856 / 裁判年月日: 昭和36年6月23日 / 結論: 棄却
一の商標から二つの称呼を生ずるものと認定しても差支えない。