甲乙双方の同一内容の標章を有する二つの商標権が登録されている場合には、右標章を使用している甲から乙の商標登録の無効審判が特許庁に請求され、乙の商標登録を無効とする審決に対し乙から右審決取消の訴が提起され、その訴訟が繋属中であつても、前記標章を現に使用している乙は、甲に対し、甲の商標権が営業廃止により消滅したとして、右商標権の不存在確認および抹消登録手続の請求をするについて訴の利益を有する。
商標権が営業廃止により消滅したことを理由とするその不存在確認および抹消登録手続の請求と訴の利益。
民訴法225条,民訴法226条,旧商標法(大正10年法律99号)13条
判旨
商標権者が営業を廃止した場合には、商標権は当然かつ確定的に消滅する。この場合、商標権の不存在について正当な利害関係を有する者は、登録名義人を相手方として商標権不存在確認および登録抹消手続を請求できる。
問題の所在(論点)
商標権者が営業を廃止した場合、登録の抹消がなされない限り商標権は存続するのか。また、利害関係人は登録名義人に対して商標権の不存在確認や抹消登録手続を請求できるか。
規範
商標は営業に係る商品を表彰するものであり、商標権は営業と一体不可分の関係にある。したがって、商標権者が営業を廃止した場合、商標権は特段の処分(登録の抹消等)を要することなく、当然かつ確定的に消滅する。また、当該商標の抹消について正当な利害関係を有する者は、登録名義人に対し、権利の不存在確認または登録抹消手続を求めることが可能である。
重要事実
D株式会社は、タオルを指定商品とする登録商標を有していたが、政府の指導や企業採算上の理由から解散を決議し、昭和21年に清算事務完了を株主に通知して営業を廃止した。その後、上告人がD社から商標権を譲り受けたとして移転登録を行った。一方で、被上告人も同一構成の商標登録を受けており、両商標権が並存する状態となった。被上告人は、D社の営業廃止により上告人名義の商標権は既に消滅していると主張し、その不存在確認と登録抹消を求めて提訴した。
事件番号: 昭和33(オ)1030 / 裁判年月日: 昭和36年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標権は、商標権者がその営業を廃止したときは、旧商標法13条(現行法の解釈においても同様)により当然に消滅し、たとえ商標登録の抹消がなされていなくても、その後に営業廃止前の商標権を譲り受けることはできない。 第1 事案の概要:D社は昭和18年に解散決議を行い清算手続に入った。清算人が清算事務完了を…
あてはめ
D社は自発的な解散決議により営業を廃止し、清算完了を通知したことで客観的にも営業廃止が認識し得る状態にあった。旧商標法13条の規定および商標権の営業との一体不可分性に照らせば、この営業廃止の事実によりD社の商標権は当然に消滅したといえる。そうである以上、消滅した権利を譲り受けたとする上告人の権利は存在せず、上告人が商標を使用している現状において、同一内容の商標権を有する被上告人は、自己の権利を保護するため上告人の商標権の不存在確認等を求める正当な利益を有すると解される。
結論
商標権は営業廃止により当然に消滅する。被上告人による商標権不存在確認および抹消登録手続請求は、正当な権利行使として認められる。
実務上の射程
商標権の付随性(営業との不可分性)を前提とした権利消滅の法理を示すものである。現行法下(商標法35条で準用する特許法98条等)では登録が効力発生要件とされるが、本判決は営業実態の喪失が権利の存続自体を否定し得る根拠として、現在も確認の利益や登録抹消請求の可否を検討する際の参考となる。
事件番号: 昭和34(オ)832 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
商標権者が単に経済上の理由から事業を中止したに過ぎず、営業を廃止する主観的意図が認められない場合には、商標法(昭和三四年改正前)の営業廃止にあたらない。
事件番号: 昭和33(オ)495 / 裁判年月日: 昭和37年1月16日 / 結論: 棄却
原判決引用の第一審判決の認定事実関係のもとで、当該会社が二年以上商号を使用しなかつたことに正当事由がないとして、その商号権の消滅を判断したことは是認できる。
事件番号: 昭和29(オ)791 / 裁判年月日: 昭和31年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】引用商標が長期間使用されていない場合であっても、適法な手続によって登録が取り消されていない限り、当該商標と類似する商標の登録を拒絶する根拠となり得る。商標の類似性判断においては、外観・観念等の要素を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人は、自らの出願商標が登録第71103号商標(引…