旧民法第九三〇条第一項の取消の相手方は最初の法律行為の相手方及びその包括承継人であると解するのを相当とするから、包括承継人に対する取消の意思表示は有効である。
旧民法第九三〇条第一項による取消の意思表示を法律行為の相手方の包括承継人に対してなした場合の効力。
旧民法930条
判旨
利益相反行為等の取消しの相手方は、最初の法律行為の相手方及びその包括承継人であり、当該取消しによって不動産所有権は遡及的に原権利者に復帰し、第三者に対してもその権利を主張できる。
問題の所在(論点)
利益相反行為等の取消権行使の相手方に包括承継人は含まれるか。また、取消しの遡及効によって復帰した所有権を、最初の相手方から権利を譲り受けた第三者に対しても主張できるか。
規範
制限能力や利益相反等を理由とする取消権(旧民法930条1項、現行民法121条参照)の行使について、その相手方は最初の法律行為の相手方及びその包括承継人である。取消しの意思表示がなされた場合、当該法律行為は遡及的に無効となり、目的物たる不動産の所有権は当然に原権利者に復帰する。その結果、原権利者は、復帰した所有権に基づき、取消し後の現在の占有者や登記保持者といった第三者に対しても、返還請求や登記抹消請求をなし得る。
重要事実
被上告人(孫)は父を代襲して家督相続し不動産を取得したが、未成年の間に、後見人である祖母Hに対して当該不動産を贈与した。その後、Hから上告人らに対し所有権移転登記等がなされ、現在は上告人らが占有している。被上告人は、成年に達した後に、Hの包括承継人(家督相続人)である上告人A1に対し、後見人と被後見人間の利益相反取引(旧民法930条1項)等に基づき、右贈与の取消しの意思表示を行った。
あてはめ
本件において、被上告人は贈与の相手方であるHの包括承継人A1に対し、成年に達した後に取消しの意思表示をなしている。この意思表示は、最初の相手方の包括承継人に対してなされたものとして有効である。取消しの効力により、Hへの贈与は遡及的に無効となり、不動産の所有権は被上告人に復帰した。したがって、当該贈与が有効であることを前提として権利を取得した上告人らの登記及び占有は、いずれも根拠を欠くものとなる。上告人らが第三者であっても、所有権復帰の遡及効により、被上告人は上告人らに対し登記抹消及び物件引渡しを請求し得る。
結論
取消しの意思表示は包括承継人に対して有効になされ、その遡及効により所有権は被上告人に復帰するため、上告人らは登記抹消及び不動産引渡しの義務を負う。
実務上の射程
取消権行使の相手方が包括承継人を含むことを明示した。また、取消しによる所有権の遡及的復帰を「物権的復帰」として捉え、第三者に対抗する際の構成(民法121条の原則的効力)を示す際に活用できる。なお、現行法下の第三者保護(民法94条2項類推適用や不動産物権変動の対抗問題等)との関係については、本判決の射程外である点に留意が必要である。
事件番号: 昭和35(オ)1086 / 裁判年月日: 昭和38年10月10日 / 結論: 棄却
被後見人の財産等を後見人が譲り受ける行為につき、後見監督人が被後見人を代理した場合または親族会の同意があつた場合でも、被後見人は、民法第八六六条による取消権を失わない。
事件番号: 昭和28(オ)1115 / 裁判年月日: 昭和30年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法定代理人である後見人から不動産の処分につき代理権を授与された復代理人が、その後代理人として売買契約を締結した場合、その売買の効果は本人に帰属する。 第1 事案の概要:上告人の法定代理人である後見人Eは、訴外Dに対し、本件不動産の処分に関する代理権を授与した。Dは、昭和23年2月20日、後代理人と…
事件番号: 昭和36(オ)1283 / 裁判年月日: 昭和39年3月12日 / 結論: 棄却
弁論の全趣旨が何をさすかを具体的に判文に説示する必要はない。
事件番号: 昭和32(オ)469 / 裁判年月日: 昭和36年5月30日 / 結論: 棄却
買主が買戻の特約を登記した不動産を第三者に転売しその登記を経由した場合は、最初の売主は転得者に対し買戻権を行使すべきである。