買主が買戻の特約を登記した不動産を第三者に転売しその登記を経由した場合は、最初の売主は転得者に対し買戻権を行使すべきである。
買主が買戻の特約を登記した不動産を第三者に転売した場合における買戻権を行使すべき相手方。
民法581条1項
判旨
不動産売買の買戻特約に基づき買戻権を行使する場合、買主が既にその不動産を第三者に転売し所有権移転登記を了しているときは、買戻権の行使は現在の所有者である転得者に対して行うべきである。
問題の所在(論点)
買戻特約付売買の買主が不動産を第三者に転売し、所有権移転登記を完了させている場合、売主による買戻権行使の相手方は誰か。
規範
買戻権の行使(民法579条)の相手方は、不動産が転売され、かつ対抗要件(登記)が具備されている場合、現在の所有権者である転得者である。これは買戻しの性質が物権的効果を伴う一方的な意思表示による所有権の復帰を目的とする点に照らし、物権変動の実態に即した相手方を選択すべきだからである。
重要事実
売主Aと買主Bとの間で買戻特約付不動産売買契約が締結された。買主Bは、約款所定の買戻期間中に、本件不動産を第三者Cに売却(転売)し、Cへの所有権移転登記を経由した。その後、売主Aが買戻権を行使しようとしたが、その行使の相手方がBであるのか、それとも転得者Cであるのかが争点となった。
事件番号: 昭和32(オ)1208 / 裁判年月日: 昭和36年4月28日 / 結論: 棄却
不動産につき甲、乙、丙と順次所有権が移転したものとして順次所有権移転登記がなされた場合において、各所有権移転行為が無効であるときは、甲が乙、丙に対し各所有権移転登記の抹消登記請求権を有するほか、乙もまた丙に対し所有権移転登記の抹消登記請求権を有する。
あてはめ
本件において、不動産は既に買主Bから第三者Cに譲渡されており、かつ所有権移転登記も完了している。買戻権が行使されると、不動産の所有権は売主Aに復帰することになるが、その時点での権利主体は転得者Cである。したがって、物権的な権利行使として、現在の登記名義人であり所有者である転得者Cを相手方として買戻しの意思表示を行うのが妥当である。
結論
買主が不動産を第三者に転売し、その登記を経由したときは、買主ではなく、その転得者に対して買戻権を行使すべきである。
実務上の射程
買戻特約が登記されている場合、第三者に対しても買戻しの効力を対抗できる(民法581条1項)。本判決は、この対抗力が認められる前提として、誰に対して意思表示をなすべきかという行使手続の相手方を明確にしたものである。実務上は、登記名義人を確認した上で、現在の所有者に対して解約金の提供(民法579条、583条)とともに行使する。
事件番号: 昭和33(オ)846 / 裁判年月日: 昭和35年11月29日 / 結論: 棄却
不動産売買契約が解除され、その所有権が売主に復帰した場合、売主はその旨の登記を経由しなければ、たまたま右不動産に予告登記がなされていても、契約解除後に買主から不動産を取得した第三者に対し所有権の取得を対抗できない。
事件番号: 昭和33(オ)1128 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
甲が乙から宅地を買受けその旨の所有権取得登記を経由したのち、乙の債務不履行を原因として右売買契約が解除された場合には、甲は乙に対し右登記の抹消登記手続を求めることができる。
事件番号: 昭和33(オ)79 / 裁判年月日: 昭和35年8月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人が代理人に対して特定の法律行為(本件では不動産の売買契約)を行うための権限を授与していた場合には、当該代理人が本人の名において行った行為の効果は本人に帰属する。 第1 事案の概要:本件において、上告人の代理人であるDは、被上告人である宮城県との間で、上告人が所有する本件建物を売り渡す旨の売買契…
事件番号: 昭和36(オ)35 / 裁判年月日: 昭和39年1月21日 / 結論: 棄却
旧民法第九三〇条第一項の取消の相手方は最初の法律行為の相手方及びその包括承継人であると解するのを相当とするから、包括承継人に対する取消の意思表示は有効である。